(別冊 マーガレット)
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リビングのソファーに、そっと置かれている少女漫画です。



勿論、我が家には、娘はおりません。身長183cm 体重 86kg 無精髭の、ちょっと前までサッカー部のキャプテンをやっていた次男が読者です;;;



昨日、トイレに置かれていたので読むともなく読んでみると・・・・・・・



巻頭に載る『終電車』・・・・深い。もの凄く深い。



卒業を前にした最近の息子は、このところ可成り遠出をして Book Off を回遊しては、意中のコミックを物色している。僕が『終電車』を高く評価したら、単行本になっている作者(アルコ)の作品を紹介してくれた。
 息子によると彼女の作風は、連載モノはイマイチだが、短編の読み切りだと突出して優れた作品を描くということだった。



男の子向けのコミックは、情けね~状態だな。。。と伝えたら、「読み方だよ。みんながみんな深いのを待ってる訳じゃね~よ・・・・」ということ。ごもっとも。。。
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(『終電車』 別冊 マーガレット)
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本棚の三段目に作者(アルコ)のシリーズものがあるので、いつでもどうぞ・・・・ということ。



いろいろ言われるが、今の若い連中もどうしてどうして、真剣に思い悩んでいる。決して現状に無関心で流されているだけじゃない(当たり前だが)。
 僕らの若い頃は、悩んでいる振りでもしないとバカだと思われるくらい、「悩む」という有り様をプラスイメージで捉えられていたように思う。けれども、今の若い連中は、外に知られてはならないもの、悩んでいることを悟られてなならないもの、そんな風に「悩む=問題を抱える」ということを、明らかにマイナスイメージで捉えているようだ。



すべての男の子が、息子のように堂々と少女漫画を読めるわけではない。明らかに、なよっとしている、一見頼りなさそうな今時の男の子は、まず人前で少女漫画を手にしているところは見せられないのでは・・・・と思う。まっ、汗臭い息子耕介だから許されるということも事実だ。そう考えると、悩んでいる男の子の姿は、描くに値しない(売れない)と出版社側は履んでいるのだろうか。。コモンセンスとして、世間では、男の子は、ウジウジ悩んではいけない風潮がまだ根強いのだろうか。。。

(「エヴァンゲリオン」)
『エヴァンゲリオン』・・・長男曜介お勧めのコミック。これも次男耕介から借りている。実は、宮台真司が、ずっと前から推しているコミックだ。



男の子の悩み方は、表向きどうしてもこうなってしまう(エヴァンゲリオン的に)。勿論、このコミックも文句なく素晴らしい。先ほど出た少女漫画とは、次元が違う。(次元が高いと言うことではなく、明らかに次元が異なっているということです)。



エヴァンゲリオン的・・・・とは、抽象的・観念的と言い換えても良いかも知れません。これはこれで悩み方としては、特段悪いことではありません。立派な悩み方の一つと言えます。気になるのは、日々の何気ない日常のどこにもある、非エヴァンゲリオン的「褻=け」としての悩みを、少女漫画では取り上げるに値する素材として積極的に表現しているが、少年漫画では、未だに、強く元気な男の子がヒーローになるものがほとんどということ。ぎりぎりエヴァンゲリオンでは、主人公の男の子は、対父親との関係で、フロイドのように、オイディプス・コンプレックス的なその弱さを本質的課題として表現している。でも、美談にはならない。



曖昧さや弱さを表向き出せないでいる男の子の置かれている「今」は、きつそうで気の毒な気がする。

 三十年くらい前から、表現の世界で女性が元気になっている今の傾向は、「曖昧さ」「弱さ」「儚さ」をある意味女性は「売り」に出来てきた歴史があるからでは、とも思う。残念ながら男の子は、これらの人間性と表向き限りなく遠いところに置かれてスポイルされている。「できそこないの男たち」じゃないが、もともと生来に、女性より男性の方が、「曖昧さ」「弱さ」「儚さ」の素因を強く保持して生まれてくるのにだ。
二人の息子をもつ親として、いまの世の中男の子にとっては、結構しんどいな~と感じる。
昔、文学が担ってきた領域を、いま明らかに少女漫画が担っている。昔のように小説を読まなくなった今、男どもは、一体どこで人間の弱さや駄目さに同調出来るのだろうか。。。



山田太一が、12年の中断を経てドラマ『ありふれた奇跡』を書いた。
http://www.fujitv.co.jp/arifureta-kiseki/index.html

もうTVドラマを書くことはないな・・・・そう思っていたそうだ。その彼が、何故に今TVドラマを書く気になったのか・・・・。



 連続ドラマを描くのは12年ぶりになります。・・・・・・中略

もう連続ドラマは描かないと決めたのは、時代の変化を感じたからです。やはり連続ドラマにも時代の流れがあり、ある時ふと「自分は違うかな」と思った。1人の作家が、どの時代にも適応していくのは、むしろみっともないことのようにも思えたんです。流れから外れるからこそ作家であるという気持ちもありました。そうしているうちに12年が経ち、現在に至ります。ただし、その間もずっと単発ドラマは描いていたので、僕自身はテレビ界から離れていたという感覚はありません。・・・・・(作者)




かみさんが見ているのと、我が家の夕飯が遅いこともあって、普段あまりTVを見ない僕だが、見るともなく見ている。「いま」を描くことに、あまり成功しているとは思えないが、主人公の男子が、所謂今風の頼りない男の子をやらせたらドンピシャの加瀬 亮{『それでもボクはやってない』主人公 (映画・周防正行監督)}だということもあり、つい引き込まれてしまう。
 息子曰く、今一番人気があるのは、キムタクや妻夫木ではなくて、加瀬 亮みたいなタイプだそうです。そうだとすると、弱い、なよっとした、けれども真剣に自分を引き受けようとする男の子も市民権を得る日が近いのか・・・・・。
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(「何を落としたんだろう?」.........今.今.今.今........「過去」。。。)
ナイーブな弱さや愚かさを、クールな強さと併せ持っている人間が、少年漫画の新しいヒーローとして描かれる日が、早く来ることを願ってやまないが、残念ながらその日は遠そうだ。



現在が、男社会であることに異論はないが、圧倒的に自由で柔軟な生き方を、女の子は選択できている様に見えるのは僕だけだろうか・・・・・。こんなことを言うと、女性問題で戦っている方々に「女性が自由なのは、漫画だけの世界で、世の中に出た途端、厳しい現実が待っているのを忘れちゃこまる!」と、お叱りを受けそうだが、厳しさの質が違うだけで、男の子も結構厳しいんだけどな~。。。と、つい呟きたくなる。



いずれにしても、少女漫画に描かれている様な、誰もが持つ弱さやデリケイトさを、男女の区別なく鷹揚に許容できる社会(宮台さん流に言うと「包摂性のある社会」)を何とか構築できないものか........



何ともうらやましいな~と思いながら、少女漫画をパラパラとめくる肋骨を痛めた私くしめであります。。。
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(『終電車』 別冊 マーガレット)