盲目の秋 T 風が立ち、浪が騒ぎ、 その間(かん)、小さな紅(くれなゐ)の花が見えはするが、 風が立ち、浪が騒ぎ、 もう永遠に帰らないことを思つて 私の青春はもはや堅い血管となり、 それはしづかで、きらびやかで、なみなみと湛(たた)へ、 厳(おごそ)かで、ゆたかで、それでゐて佗しく あゝ、胸に残る…… 風が立ち、浪が騒ぎ、 |
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言葉を失いかけた時、人はこの詩に共感を覚えるのじゃないだろうか............................。 もはや、言葉をもってしても喩えられない場面に出会ってしまった時、人はこの詩に共感を覚えるのじゃないだろうか............................。 「無」という状況を、「無」という文字や言葉で喩えるしか「無」という場面を人に伝えることが出来ないもどかしさ。 どんな言葉もあたらない焦り。 人はそんなときでも、暫く沈黙した後で再び言葉をまさぐる......................。 |