8月19日                       超資本主義の中の工芸誌

 こう我がPCへのアタックが来るとは参るな〜・・・・と、ここ連日のハッカーの侵入(30秒ごとにアタックされる)を Fierwall で阻止し続けている中で「ひとこと」を更新していま〜す。今日のテーマはちょっと硬いです(^^;)。ごめんなさい。。。。。

 先日銀座で個展を持ったが、丁度中日頃、僕が個展を持ち始めた頃(20年以上前)からの友人がギャラリーに寄ってくれた。

この友人は、工芸の世界で生きてきた者ならば(特に作家志望で制作を続けてきた者ならば)知らない者はいないだろう。嘗て「かたち」という工芸誌の主幹でもあった。このコーナーでも何度か取り上げた事のある、20年ほど前にこれからの工芸誌はどうあるべきかで激烈に対立した工芸界での戦友?でもある。

結局、その対立からここ十数年親交ははなかった。

当時の僕は、このコーナー(2/22「ほんとによかった!」)でも触れたように、良い悪いは別としてマーケットを無視して工芸誌を発刊し続けることは事実上無理なことを’80年代に入って資本主義は大きく変容したことを説明しつつ彼とその賛同者を説得し続けた。

 僕ら団塊の世代の終わりに所属する世代は、所謂全共闘世代とも重なるのでどうしても「資本主義」≠「善」といった方程式が刷り込まれている。というか「資本主義」を批判的なものとしたスタンスでいることがある民度の高さを保証するかのような錯覚を持っていた。

従って、当時の「資本主義」を評価するには相当なハイレベルな知識を必要としてしていた。
 何しろ当時世界の中で一番ハイレベルの知識人として認知されていたフランスの思想家、フェリックス・ガタリやジル・ドゥルーズでさえ諸悪の根元は資本主義にある旨の発言をしていたのだから。(当時、我が吉本氏は資本主義なるものは、人間が無意識に生み出した傑作だ!と誤解を覚悟で勇気ある発言を繰り返していた・・・・すごいでしょ!
(^^;)

・・・・・であるから資本主義を象徴するもの、例えばコマーシャルなどは「もの」の本質をうったえるものではなく、表層を戯れる余分なもので本質を歪める「悪」の側に依拠するものくらいに捉えられていた。今あるコマーシャルのエキスと本質はナチスドイツのヒットラーが生み出したもの(赤ん坊や子供とのツーショットで柔和な人物像を印象づけたり、また同じ内容のフレーズを執拗に繰り返したりする手法)であるからして、当たっている部分もあるのだが。

資本主義の中心的課題は人間の欲望を無限に喚起し続けることでもある。新しい商品を便利さや使い勝手とスピードにうったえて新たな消費を生み出しながら増殖し続けること・・・・このことが当初産業廃棄物や環境破壊を伴って進行したため、どうしても「資本主義」≠「善」というシンボリックなトラウマを残してしまった。そして、前近代の穏やかでゆったりとした時間意識を実体験として持ったことのある我々の世代は、資本主義のこのスピードに付いていくのがしんどい。それ故「「資本主義」≠「善」という方程式を無意識に描いてしまうのも自然だと思う。

今は20年前の「資本主義観」とは比較にならないほど、ある意味厳しい超資本主義のなかで僕らは時代に翻弄されている。(このしんどさが実感できないのはマーケットの外にいる役人だけだ)。この様な人々が余裕のない中で「工芸誌」を発刊し続ける事は「あり」なのか「なし」なのか、こんなに活字離れが叫ばれるなかで・・・・・・・・。

         

(web コミック「じゃりんこチエ」&「クレヨンしんちゃん」より)

雑誌の刊行は非常に難しいといわれて久しい。先日も、意外と好調だと思われていたコミック業界の中で「クレヨンしんちゃん」や「じゃりン子チエ 」の掲載で順調だと思われていたコミック誌も休刊となった。
 その様な状況の中で「工芸誌」を再発刊するのは無謀だろう。

じっくりとものの中に入っていき、その世界をゆったりとした悠久の時間と自分を同調させそのものを味わうということは、僕らにはもう許されないのだろうか・・・・・・

多分、僕も、そして今回紹介した工芸誌の再生を密かに目論んでいる友人も無意識では気付いているのかも知れない。

現に「工芸誌」なるものは日本の市場に一切ない。先ほど yahoo japan で検索しようとしたらしたら、不吉にも我がキーボードは「工芸」と「変換」しやがった。けっ。

そして、その旧友と僕の出した結論は、インターネット上でホームページでのメッセージの発信という凡庸なものだった。

でも、やれることから始めなければならないのは、この世界だけに限ったことではありません・・・・・・・。

来月には、世界に向けて「かたち」という工芸の WEB SITE が発信されることでしょう。どうか皆さん良いアイデアーなどありましたら是非ともメールをお寄せ下さい。勿論、「かたち」のWEB SITE が立ち上がったときはこのコーナーで紹介しますので何卒 よ・ろ・し・く m(_ _)m

2003年8月記
現在『かたち』はドメインを取得し、 Official Web Site を立ち上げました。 →→ http://katachi21.com