le bain での「厨子三様」展が好評のうちに終了した。

お忙しい中、不便な会場まで足を運んで御来廊下さったみなさま、ほんとうにありがとうございました。

僕は鎌倉彫出身なので、厨子の制作は、その出自から水を得た魚のように自然に進められる。器などのように厳格にサイズを小さく限定されることもなく、そして何よりも装飾を比較的自由に構成出来ることも救われる。

鎌倉彫の修行中、いつも頭の片隅にあったのは「実用的には、彫りはない方がいいんじゃ・・・・」という疑問だった........................


................外圧により江戸幕府が鎖国を解き、天皇を中心に据えることで各藩にあった、今でいえば地方分権を中央集権にい変えることで近代化の効率を上げたわけだが、その際、天皇を奉る大儀ゆえ廃仏毀釈(神道に一本化するため仏教を信じてはならん・・・という明治政府の御触れ)を余儀なくされ、お陰で鎌倉彫のルーツである仏師は失職した。

延命策として、それまで培った仏師としてのスキル、つまり仏像や仏具を作る際に派生する装飾技術を盆皿等の工芸品にに転用した。
 これは、苦肉の策で、もともとハレとしてある仏教空間を装飾的に演出する技術として仏師の職はあったわけだが、このスキルを無理矢理にケとしての日常の世界に軸を移し工芸品への転用をはかったわけだ。
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(日比野克彦さんとのスリーショット.....オープニングにて)
盆に柄を入れて彫っていると「こんなに凸凹だと実用に耐えないよな〜。。。」という無意識の声がいつも脳裏にあった。

彫りの作業そのものは「こんな楽しいことはない」と思いながらできる。でも、ゴミ溜まっちゃうし、角が出て漆が剥げちゃうし、この彫り、盆には必要ないよな〜・・・・と思いながら当時彫っていた。

厨子の作業は、こんな屈折した感情を持たずに済む。

「屈折した感情」は、廃仏毀釈の御触れが出た際の仏師の方が深かっただろう。何しろプライド高かった当時の仏師は「盆皿に彫ってられるか!」と鑿を折った者も多かったという。

近代化という事態は、鎌倉彫に限らず多かれ少なかれ僕らの生活世界から「装飾」を追放した。市民社会の台頭と共に訪れる大衆社会は、「大量生産・大量消費」というコンセプトを生み、やがて市場原理の貫徹により作業工程を増やし価格を上げてしまう「装飾」は消えて行かざるを得なかった。

「蓬莱紋彫り厨子」
言うまでもなく、人間にとって「装飾」といった表現領域はとても重要だ。
 市場原理でこぼれ落ちてしまった「装飾という」心的領域を、ダサイ鎌倉彫の出身であるが故に担うことになったが、厨子という素材は、正当に、そして自然体で制作でき、その意味でとても幸運な巡り合わせだと感じている。

厨子が、自分自身の表現領域を深める実感をもちながら、更に新たな表現領域を開く予感が持てる。この機を生かすため、尚一層精進したい。


ところで、オープニングでは、いつものようにかみさんは、サービス精神旺盛に(半分ミーハーに)日比野克彦さんとのスリーショットをリクエスト。「昨日(11/15)は何の日?」というかみさんの質問に・・・・「ジョホールバル」と即答する彼は、勿論芸大サッカー部OBであります。とても感じのいい方でした。そして、楽しくサッカー談議を交わすことが出来ました。HIGASHIYAさんの料理と酒もなかなかの楽しいパーティーでした。