オオタカ君  
   

亡父は5人兄弟の次男で姉と兄と弟と妹がいた。長兄はバイオリンを弾いたり、煎茶道のサークルに入り、自宅で教室を開くような軟派であったので、子供のころから田畑の仕事を手伝わされたのだと言っていた。そして、相続の時に畑を兄に強く申し出て受け継いだのだった。

 

その畑は圃場整理で一枚にまとめられ機械がなければ賄いきれないほどの広さなのだが、父が鬼籍に入ってすでに7年、ほとんどスコップ一丁で草と戦っている。その畑に出かけると晩秋から早春にかけてオオタカが顔を見せてくれる。

 
   

チョウゲンボウなんて小型の猛禽類も愛くるしい表情を見せてくれるのだが、どうも我が家の畑の枯草の中で越冬しているトノサマバッタなどが食料になっているようだ。オオタカは小鳥や野ネズミなどを捕食しているのだろう。

 

鳥は飛ぶ時にエネルギーを消費するため、つねに食料をとらねばならない。オオタカやチョウゲンボウにとってカエルやトカゲなどが冬眠する季節は、かなり厳しい時期になる。そして、電信柱のテッペンに留まって辺りを見回す事になる。

常滑レポート index
03/04 オオタカ君 
溺れる者は
平成も30年
定年後 
電話が苦手に
身体 
夏の終わりに 
真 実 
Baby Steps 
亡 父
時間があったら 
若年性認知症
長三賞1972年 
 それにしても 
ラジオ
晩秋の夕日に
楽園にて
飲酒が止まらない
合宿
手前味噌 
蝉時雨の頃に
変貌 
 絶好調な時
十年一日 
亡父七回忌
天然物 
2015年末2016年始
2005年の早春
ゆたかな時間
仙境 
世代交代 
うさぎ追いし
孤独 
研究姿勢 
ヌートリア 
急須
石から鉄へ 
縄文時代 
年の瀬に 
乙未 
だいえっと 
完全主義 
 さいてん 
 定説くずし
 振り返りつつ
 夢のような
名前の世界
予定調和
かめら
論文提出 
 こんびに
小鮒釣りし
 論文提出
前近代・近代の彼方 男と女 
異 形 
ファール 
しみじみ
子どものころ
渥 美
飽和点 
世界
青い鳥
田舎暮らし
 日記
 自画像
人類史的転換......
美しき都会
 暗黙知
感動せんとや
稔りの秋に
バベルの塔の物語 
若者たちと
蝉時雨聞きながら
 行く末の記
過剰なるものども
 梅雨入り直後
笛を吹いてはならぬ 
 晴鳶堂の記
 桜咲く
 若者三人
忘我に導かれる事 
立春 
一区切りの正月   

2005~2017  常滑レポート index
 
 

したがって、その飛翔する姿を見るのは夕刻営巣の森に帰る時くらいなのだが、まれにハンティングのために電柱から田んぼの面に滑空する場面を目にする事がある。そして、そんな時、どこからとも現れるのが黒い鳥である。しかも、きまって複数でオオタカの後を追いかけアタックを試みるのであった。

 

オオタカのエサを横取りしようとでもしているのだろう。カラスは新興住宅地の周辺でその数を異常なほど増やしている。畑から帰る夕刻の道路沿いの電線にはスズメやムクドリのように隊列を組んで止まっている。

 

姿はオオタカに似ていても、いつも空をくるくる旋回している鳶はカラスと同じ雑食性だ。そして、彼らもしばしば二三羽のカラスに追いかけられている。領空を侵犯したとでも主張しているのだろう。

 

カラスは畑に播かれたマメを掘り返して食べたり、農作物を食べたりもする。鳶にその知恵は無い。カラスが繁殖するのは、その知恵のおかげに違いない。そして、その姿は人類のそれに重なるのだ。

 

僕が畑に出かける以前、オオタカは中部国際空港へのアクセス道路予定地に営巣していることでひとしきり話題になった。さらに、広域農道の予定地にも営巣しており、開発計画が何年か繰り越されたこともあった。

 

そうした計画が、つぎつぎに実現して今日に至るのだが、その周辺には新しい街が生まれ、どこからともなくカラスの群れが電線にとまっているのであった。だが、しかし、絶滅が危惧されたオオタカも人里近くの環境に適応してきているようでもある。

 2005~2017  常滑レポート index

 page top