亡父七回忌 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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2010年の二月十九日に老父が他界し、今年は早いもので七回忌であった。あれから老母は独居老人としての日々を送っている。一人息子である僕は週に一度は実家に泊り様子をみてきたのだが、彼女は一人になって頗る元気である。 一周忌、三回忌の時には父親の兄弟やその子供たちにも法要に参列してもらい、大広間のある料理屋で会食をしたものであったが、七回忌はごく内輪で我が家と妹の家族に老母を加えてもわずかに9人であった。 |
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法要を寺で済ませ墓に卒塔婆を立て線香を焚き、その後に会食となった。宴会料理というのは魚や海老、個人鍋での肉料理などをこれでもかといった形で出すもので老人は、多くを食べ残して折詰めにして持ち帰るのであった。 おそらく食糧事情が貧しかった時代、こうした行事で招待されたときには普段食べられないようなご馳走をたらふく食べ、家に帰ってもその余韻に浸ることがおもてなしを受けるということであったのだろう。自分が小中学生の頃まではそうであったように記憶している。 |
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しかし、昨今お刺身やエビフライ、ブリの照り焼き、蛸の酢の物、牛肉鍋、鯛の煮付けなどなどスーパーでいつでも買える食材でご馳走というほどのものでもないのではないだろうか。少なくとも我が家では日常的に食しているものだ。 味付けも、これといって特別な感じがしないのは僕の舌の機能の問題か。いや、食通の妻も特別美味しいという感想をもらした事が無い。 そこで、今回は創作料理の店でコース料理を注文することにした。和食系の食材を使いつつイタメシ系のアレンジをしたり、しゃれた料理を出してくれる。元の職場で会食などをするときにはしばしば客を案内もしたが大企業の重役クラスでも喜んでくれた店だ。 |
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そして、今回も珍しい料理の名前や素材や調理法などを話題に話も盛り上がり成長した孫たちにも囲まれ老母は幸福の絶頂に達し、あれやこれやと子や孫の小さかった頃の想い出話をあれこれ語るのであった。 その話の中にまだ彼女が若かった頃、とある家の娘を音楽家にしたがっていた親がいて、その親は娘の声が良くなるように生きているナメクジを毎日飲ませていたのだが、その甲斐あって娘は長じて音楽の先生になったというのがある。 いささか馬鹿げた話だ。もし、そのような事が事実であればオペラの本場イタリアやドイツでもナメクジを飲んでしかるべきだ。だいたいナメクジの成分が声帯を能く振るわせるのか、あるいはぬるぬるした粘膜が声帯を優しく労わるのか。 |
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前者であれば、その要素を抽出して声が良く出るサプリメントができる。後者であればなにも雑菌のついたナメクジではなくゼリーなどで同じような質感のものを作ればよい。結構な商品になるに違いない。 おそらくはヌルヌルしたナメクジが喉の内部に粘膜をうつして声が滑らかになるといった類推なのであろう。まるでJ.G.フレーザーの『金枝篇』にでも出てきそうな話であろう。もしやと思いネット検索してみると、なんとずばりナメクジを飲むと声がよくなると書いてある辞書があるが本当かと尋ねている人物がいた。 |
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そうした俗信がナメクジにはあると書かれていたものを鵜呑みにしての質問なのであろうが、ベストアンサーその他、そんなことはありえないという回答が並んでいる。むべなるかなだ。 しかし、老母は82年の人生をそうした事を疑うことなく送ってきたのであった。そして、僕はそんな彼女に育てられてきたのであった。そして、僕に育てられながら娘は占い師があなたは早く結婚すると、かならず離婚すると言われたことを信じているようだ。 占い師でなくても僕だってそのくらいのことは言える。それは未来を予測する超能力ではなくて、君の性格が言葉の端々に出ているからなんだよ。でもって、慎重に相手を選んで遅くに結婚しても離婚するリスクは決して小さくないってことも知っておくべきだと父親は言っておくべきなんだろう。 |
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