バベルの塔の物語
 
常滑レポート index
10/05 バベルの塔の物語 
若者たちと
蝉時雨聞きながら
 行く末の記
過剰なるものども
 梅雨入り直後
笛を吹いてはならぬ 
 晴鳶堂の記
 桜咲く
 若者三人
忘我に導かれる事 
立春 
一区切りの正月   




2005~2011  常滑レポート index
友人の陶器商が早い段階で経済特区として成長した中国の都会で手掛けていた現代日本陶芸作品の売り込みに頓挫している。

ここ数年の間に常滑の急須を若いOL層をターゲットとして売り込む商売に成功し、その流れで人脈も出来、いよいよ富裕層といわれる人々を相手にしたビジネスで、これが順調に行けば、さらに大きく伸ばしていこうという矢先の半日運動だ。

とりあえず日本という看板を取り下げ国際という肩書きでオープニングまでこぎつけ、お客さまへの説明会・パーティーなどこなして帰国した彼であったが、その後の暴徒化したデモ騒ぎが続くなかで、ひとまず日本からの作品を引き下げ、時を待つということになっているそうだ。
 
   
   
所詮は中国もバブルだし、やがてその反動が来ることは確かだろうが、稼げるうちに稼ぐというのは商売人の本性であろう。幸いにして現地で大きなビジネスを手掛ける若手実業家と日本に帰化している日本文化を深く理解する中国人が彼の相棒としてスクラムを組んでいた。

まったく、まさかの急展開にはあきれるばかりだ。国交回復して40年、戦後もじきに70年という、この時期においても、なお潜在的に日本という国が悪辣非道の国であるという意識は根強く残っていたのだ。

もっとも、その直前まで観光客は右肩上がりで増加していたし、電化製品など日本のものが品質が高いとして家電量販店の救世主のごとく買い物をしていたのが他ならぬ中国人であった。
 
おそらく、中華思想をもつ彼等にとって自国産品より優れた品質を持った製品を生み出す国が同じアジア世界に存在する事自体が潜在的に好ましからざるものの、現実は現実として認めざるを得ないという複雑な要素があるのであろう。

サダム・フセインが消され、いよいよパクス・アメリカーナが地球を覆い尽くすかと思われたころ、世はグローバリズムを声高に論じていた。マイクロソフト帝国もそれに連動して地球を覆っていったのだった。ネット社会の可能性もバラ色であった。

10・11のテロとアフガンに象徴されるイスラム原理主義勢力の圧倒的な粘り強さは、さしものアメリカすら手を引かざるをえないほどに協力であり、その動きはキリスト教世界に対して好戦的である。
 
 
まことにもって、バベルの塔の物語はよく出来ていると感嘆せざるをえない。しかし、その一方で、様々な原材料や部品・パーツ、さらには特許などグローバル化が進んでいるのも現実であって、今さら逆戻りできないという部分も確実に存在する。

国家・民族・宗教・そして、それぞれが担う歴史の重みを改めて認識せざるをえないと痛感する。見方を変えると、そうした一見愚かに見える部分が地球上で人類の以上繁殖のブレーキとして機能しているのかもしれない。

そのブレーキ機能が完全になくなった時に下される神の怒りとは何なのか。あれもこれもと想像されるところがなんとも恐ろしい。
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