年の瀬に | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
今年も残すところ1週間あまりとなった。怒涛の流れのように、時間が過ぎていってしまう。4月からアルバイター的ポジションになって、いろんなことができると目論んでいたのだが、実際には何も出来ていないような気がする。 夏の盛りに国学院大の先生と一緒して千葉の佐倉を訪れたのは今年の事なのだが、随分遠い過去のような気もするから不思議だ。その時、調査が早めに終りせっかくだからと帰路印旛郡市の埋蔵文化財センターに寄り展示を見たのであった。 知らなかったのだが、1994年に成田市の南羽島中岫(みなみはとりなかのごき)という遺跡から縄文前期の土器製マスクが出土していた。前期の中葉から後葉ということで約6000年前の造形である。 |
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2005~2014 常滑レポート index |
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出土遺構からは装身具なども出ており土坑墓ということになる。このロシアの大統領かとおぼしき人相には心底驚いたのだ。これが縄文時代????しかも、前期????という感じだ。 縄文の人物表現といえは言わずと知れた土偶である。そして、その土偶はといえば遮光器形やハート型などなど、およそ人間とは異次元のウィーナスを表現するものなのである。縄文人の造形は、その過剰に装飾された土器を見れば一目瞭然、ハイレベルなのだから、リアルな表現は、すればできたに違いない。 この成田のマスクは、その造形力を示して余りある事例であろう。縄文時代の人々も我々現代人と同じように水面に写った自分の顔を認識し、他者を土偶のように認識してはいなかった証左となりえよう。 |
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では、いったい何故土偶はあのような造形になってしまったのだろうか。べつに、そんな関心から読んだのではないのだが、たまたま書店で手にした『脳内麻薬 人間を支配する快楽物質ドーパミンの正体』中野信子 幻冬舎新書を読んでいて気になる個所に行き当たった。 天然の幻覚作用を持つ「マジックマッシュルーム」という節に書かれている内容は実に示唆的だ。「キノコの化学物質を作り出す能力はすべての生物の中でも飛びぬけており、ほかの生物にはないユニークな成分を持つキノコが多数知られてい」る。 天然の幻覚作用を持つ「マジックマッシュルーム」という節に書かれている内容は実に示唆的だ。「キノコの化学物質を作り出す能力はすべての生物の中でも飛びぬけており、ほかの生物にはないユニークな成分を持つキノコが多数知られてい」る。 そして、「キノコは中南米のインディオたちの間で古くから「神の肉」と呼ばれ崇められてい」た。キノコの「幻覚作用は大麻の何倍も強力で」あることは、昨今の危険ドラック・脱法ハーブの類が、このマジックマッシュルームと同類の物質であることからも納得できるし、縄文人とインディオが共にモンゴロイドとして大陸から新天地に向ったグループであることも実に興味深い。 |
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キノコの「幻覚成文はシロシビンとシロシンという2種類の物質で」「重要な神経伝達物質であるセロトニンがほかの神経に働くときの受け取る側に作用し」幻覚と幻聴をもたらすことになる。 DMTを含む植物という節では、「アマゾンに自生するサイコトリア、チャクロバンガなどの植物の葉にDMTが含まれて」おり「アマゾンの呪術者たちは、この植物とMAO阻害物質を含む植物アヤワスカの茎を混ぜて、幻覚剤にして儀式に使用」するという。 さらに、「ニューメキシコ大学のリック・ストラスマン教授が60人以上にDMTを注射する実験を行なったところ、半数近くが地球外生物に遭遇したとこたえたそうだ」という記述には膝を叩かずにはいられない。 |
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主要参考文献を見るとStrassman RJ.のpsychophamscology (精神薬理学関係)の文献は94・96・01年の3冊が挙げられており情報源と思う。 さてさて、縄文人の遺した土偶がしばしば地球外生物との遭遇を云々するような見方がトンデモ系の説として散見される。もちろん何でもありのネット上での言説で中身まで読んだこともないのであるが、だれでもそんな印象を受けるほどに異様な造形が土偶である。 土偶が特異に発達するのは中部高地から東北にかけての東日本である。気候は現在とかなり異なるものではあるがこの地域のキノコは多種多様であり山も深い。リアルな神的姿に遭遇できる縄文呪術者が特別なマッシュルームの生息地を知悉していたことは、まんざらありえない見方ではなかろう。 |
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縄文も開始から7000年以上も過ぎた中期以降になって地球外生物を思わせる特異な造形が多くなっていることも、このマッシュルームと遭遇し、それを縄文人の神的創造に利用するプロセスとして興味深いところだ。 狩猟採集経済を基盤としていた彼等にとって自然界の可食物質には貪欲な挑戦が試みられ季節の山の幸の開拓も活発であったと想像することは充分ありうることである。後・晩期ともなれば見事な土偶が産み出される。 そして、土偶に象徴される縄文的呪術大系が弥生時代になると見事に変貌していくのも見事な現象というべきだ。関東以北の弥生時代の土器棺墓では土偶を髣髴とさせる人面土器が稀に出土する。その時期の弥生式土器を縄文晩期の土器と区別することは容易でない事からすれば、その弥生文化は極めて混成的なものであり、その縄文的造形の残存も納得できるのである。 若い頃にこんなことに思い至っていたら、なんとかDMTを含むキノコを探すフィールドワークをしようとしたかもしれない。それくらい魅力的な見方のように思ふ。アマゾンの呪術者と同レベルの植物に関する知識を縄文人は経験的に獲得していたはずであろうと。 |