若者三人 |
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2005~2010 常滑レポート index |
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何年前になるのか記憶が定かではないのだが、かれこれ5年ほど以前、地元の新聞社の支局長の家に連れられていき、若者も交えて遅くまで飲んだことがあった。夏のころで支局長は文化部出身の話のできる人物だった。 そして、若者は陶芸家の卵たちであった。一人は陶芸研究所の研修生と結婚し、祖父の代から続いた工場を閉鎖するときに手伝っていたことがあった。もう一人は、最近になって近づきが出来てきたのだが、中野さんはあの時の飲み会で一緒でしたと名乗りをあげてもらって漸く思い起こすことができた。 |
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彼の名は田中豊というのだが、その田中君は最近の常滑では知る人ぞ知る的存在になっていたのだが、美濃の土岐市が開催しているオリベ陶芸展で今回大賞を受賞したのだった。 田中君は今風にいうところのイケメン男子である。淡路島の産ながら陶芸がやりたくて常滑に落着いている。会うたびに村上春樹の小説『海辺のカフカ』の主人公、田村カフカ君や図書館の大野さんの匂いを感じる存在だ。 |
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残念なのは、田中君の情報がネット上にほとんどないということだ。それはそれとして、また小説的ではあるのだが、彼を紹介するのに骨がおれることになる。ブログなど開設していてくれたらと思う。 そして、今年になって常滑のギャラリーで開かれたグループ展の時に初めてその存在を知ったのが正木渡という作家だ。そこで御茶碗を2点購入した。一つは小ぶりで旅茶碗。実に良い出来だと感心させられた。 |
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常滑市民俗資料館 |
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何年か前に古くからの付き合いの伊藤雄志氏から今、氏のかつての仕事場であった南山陶苑で若者がロクロ仕事をしていると聴かされたことがあったので、あるいはと思い茶碗を持参して伊藤氏に尋ねるとまさしく彼こそが正木君であった。 | |||||||||||||||||||||||||
旅茶碗が大いに気に入り、どうせならともう一つしっかりした茶碗も買うことにした。グループ展の会場に残っていた作品は、手取りがいささか重過ぎるのと焼成の際に使った道具土の付着が気に入らないのだが、それでも後で後悔するかもしれぬと思い購入。御茶碗の値段にしては随分と安いのだから。 正木君も田中君も共にまだ三十台の若さだ。接点が少ないのも当然といえば当然だ。しかし、なんだかんだでつながりがあるのがこの町の魅力である。 |
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2005~2010 常滑レポート index |
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そして、その魅力は時に面妖なことにもなる。このところいささか目立ち過ぎの感が強い自分、その動きがこの町の中に摩擦を生んでいる。方向性は間違ってはいないのだがやり方に落ち度があったことは自覚している。勇みすぎたきらいがある。 そんな反省をしつつも若者が頭角を顕してくれるのを眼にすることができるのは、なんともありがたい。応援したくなる。そして、元気をもらうことにも。もう一人、田中君と一緒にいた八木孝幸君も陶業の方面で頭角を現してきた。嬉しい限りだ。 |
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