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東アジア文化都市2018金沢実行委員会主催による 『工芸×霊性』に出品しました。事後報告になってしまいました。会期は11月29日~12月9日まででしたのですでに終了しています。インフォーメーション遅くなって申し訳ありません。

『工芸×霊性』会場............しいのき記念館






ほんと、金沢を訪れる度思うのですが、お隣の ↓ 四高記念館にしろ、今回の会場になった「しいのき記念館」にしろ、近代遺構の活かし方が抜群に上手いです。金沢という地方都市そのものが、云わば明治村のような雰囲気を持っています(ちょっと羨ましいですねぇ)
 
石川四高記念文化交流館
いつもの様に裏日本沿いに北陸に向かった(わざわざ表日本の京都経由で行くのがばかばかしい)。在来線普通電車の小浜線は、東舞鶴から敦賀まで23駅もあるが全く時間を持て余すことはない。
 前回は暗記するほど古文書と睨めっこをしていたし、今回も iPad の資料に目を通していると、あっという間に敦賀に着き慌てて特急に乗り継ぐ。前回の講座でもiPadは大活躍をしてくれたが、ここ最近は古文書を画像で取り込みデーターとして車内で閲覧している。もう手放せない。

僕の担当する特別講座の前日に、今回の『工芸×霊性』のシンポジュームがあるということなので二日早く金沢へ向かった。

『工芸×霊性』会場............しいのき記念館表入り口
























『工芸×霊性』会場
外人さんが僕の作品をじっと見ていますねぇ。。

この10月に上野の博物館へ「マルセル・デュシャン展」を観に行ったときにも驚いたのですが、アメリカの美術館の影響でしょうか写真撮影が許可されていました。今回の会場でもOKということでしたので撮らせてもらいました(良い傾向だと思います)
 会場に入って直ぐの一等地に展示して頂いたのでとても嬉しく思いました。偶然、KCBCの理事の方にお会いしたので「とても良い場所に展示してくださって、ありがとうございます」とご挨拶したところ「素っ晴らしかったので....」というお褒めのお言葉に安堵。
 自分の作品に自信はありましたが、伝統色強い金沢でのウケはどうかなぁと内心ちょっぴり不安もありました。

会場の係りの方(年配の方で地元では著名そう....)に「数式が書いてあるんですねぇ数学好きの方は喜ばれるのでは。。」と好感度は高そう。

「はーと落書き万葉小厨子」















 
数学は好きで、特に高等数学の数式は美しいと思います(特段 E=mc2 だけが美しい訳ではありません)。なので、つい落書きに加えたくなります(洒落も含ませて)。こう見ると結構真面目に落書きってますねぇ。

みなさん、よく観てくださっていて落書 ing する甲斐があります。ならばと、元歌と翻訳文をカードにしていただきました。以下↓

万葉集

As I turn my gaze upwardand see the crescent moon,I recall the trailing eyebrows of the woman I saw but once.

 

振り仰けて 若月見れば 一目見し 人の眉引 思ほゆるかも

(巻
6・九九四)  「大伴宿禰(くすね)家持の初月の歌一首」

 
結構描き込んでいるのですが、未だ足りない気分です(これ以上描いたら煩いかも。。)。そういえば、漢字や仮名文字がありませんねぇ。意識して英字に拘った積りもないのですが。次は、難しい平仮名に挑戦してみたいと思います。

実は、仕上げのアイディアはたくさんあってCGではいくつか試みてみた。以下↓。。

plan 1
色というものをどう考えるのかは、それこそ色々だが、漆という素材の性質上、なかなか面倒だ。というのは、練り込む色粉を混ぜた時には未だ漆の酸化=硬化が進んでいる段階なので、その酸化が完了するまでに色味は大きく変わってしまう。どう変わるのかというと黒ずむ。なので絵の具のように「これだ!」という色を混ぜた段階で出せても余り意味がない。その先変わってゆくからだ。

ただ言えるのは、数十年、あるいは百年ほどすれば混ぜたときの色に戻る。
 40年程前、そう鎌倉彫の修行時代(博古堂)に明治時代の座卓の修理を経験させてもらったことがあった。裏をひっくり返して修繕箇所を確認していたとき裏面が土色だったことに訝しく思ったことを記憶している。初め見た時には何のことやらさっぱりわからず??だった。それは、つまり百年以上経って漆が透けていたので錆下地の色が、元の砥の粉の色=土色になっていたという訳だ。

plan 2
事程左様に、 調合したばかりの色漆は、その後大きく変化するので、そこが厄介だ。今回も色々試してみた。色粉を通常の2倍、3倍としてサンプルを作ってみたが、色粉を多くするにつけ乾き=硬化はドスンと遅くなる。冬場なので尚更だ。ただ自分の好きな色味、特に緑色の調合は会得した。丁度、椿梅厨子の修理で葉の色が経年で飛んだ色になっていたので乾きは悪かったが早速使ってみた。

作品を仕上げるまで、試作や実験を繰り返している自分にちょっと驚いて感心しています♬

甘酒は旨い!って、漸く酒粕が出るシーズンとなりました。飲みながら更新しています。

plan 3 
白漆も試してみた。問屋さんで作られた白漆より、十年以上前、自前で調合した白漆の方が断然白に近い。
 結局、今回は全て没。 でも、このことは全て来年の第三回厨子展に活かされることは確実なので一つも無駄にはなっていません。今からカラフルでチャーミングな厨子ができることにドキドキです。

頭の中では、 plan 以上にたくさんのサンプルを描いています。これも来年までお預けですかね。

『工芸×霊性』会場............しいのき記念館
因みに、『工芸×霊性』への作品のコメントは以下↓になります。

作品Aタイトル 「はーと落書き万葉小厨子」

玉箱、それは、大切な「ひと」や「もの」が“居なくなる”ことを了解できないでいる僕らに、そっと折り合いをつけさせてくれる器。そこに仕舞い込まれるものは、ひとの面影やものに付帯する霊になるのでしょう。

作品Bタイトル   「獅子雲紋彫重箱」

ひとが一番身近に幸せを感じる時、それは美味しい料理でもてなされたとき。何気ない日々の惣菜や手の込んだ調理を盛る上でも欠かせないのが食の玉箱である重箱。出来れば日本の古層に触れた意匠があれば有難い。

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  今回、会場に入る前、自分の作品の見栄えと同じく気になったのは、卯辰山工芸工房出身者がその殆どになる特別講座の参加者の作品だった。最近の若い人たち(といっても五十近い受講者もいる)は余りモノを言わないので尚更だ。テーマも『霊性』で、正直大丈夫かなぁと.......。

ところが、展示されている作品は、その殆どが霊性という縛りがあるにもかかわらず自由度が高く、のびのびと表現されていた。それでいて、とても初々しい。これは多少なりとも関わった身としては素直に嬉しかったです。そして、今の若い人たちも『霊性』というテーマに真摯に向き合って自分なりの解釈と回答を出すのだなぁと感心させられました。それは、大切な何かを拾い直したような感覚にも似て。。
 
21世紀美術館
そうそう、シンポジュームの終了時、僕のお隣りに座っていた方が「入って直ぐのところにあった作品の方ですよね。とても良い作品でした。」とお声をかけていただきました。お聞きすると『コレクションの会』といって『一年に作品を一つ買う会』ということ。世の中には奇特な方々がいらっしゃるものだなぁと感心。さすが金沢ならでは。全国代表を務める方だそうで「宜しくお願いします!」と直対応しちゃいました;;
 
ということで、長くなりました。今回こそグッドタイミングだった鈴木大拙の「日本的霊性」でしたが、触れることができませんでした。
改めてまた。
では、では。