修士学位論文
知的障害者アートを取り入れた芸術祭と地域再生
-兵庫県養父市の芸術祭にみる地域文化資源創生プロセス-
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 本日「卒業記念パーティー」がありました。

終盤いろいろありましたが、お陰をもちましてどうやら修士号を取得ということになりました。授与式は神戸にて3/22日にあります。

長かったような、あっという間だった様な微妙です。

結局、修士論文のタイトルは上↑の様な、ちょっと長めになりましたが、これには訳がありまして、別の機会に触れたいと思います。

折角なので、長い論文になりますので全てを紹介するのは難しいのと、担当教官に「あまり外部に漏らさない方がいい.....」という忠告を頂いたので、このエキスを更に濃縮させて学会誌に投稿後、一部紹介できたらと思います。

でも、ほんのちょっと面白そうなところを..............。
 
作:川島 清一
描くということ(二)

知的障害者の方々の作品と一口に言ってもそれは多様である。そこで「ことびきライフ」(養父市の福祉施設の余暇活動)を代表する川島清一さんの絵をとりあげ知的障害者アートの一端を紹介したいと思う。                
上にある絵は、「ことびきライフ」の活動によって頭髪が白髪から黒髪へ戻った川島さん(制作時80歳を優に超えていた)の作品である。作品の特徴に、執拗なまでの「繰り返し」が見てとれる。拘泥といってもいい。それは終わりのないアナロジーともいえ、一つのパターンが執拗に反復している。

もちろん、このことは何も異常であるということではなく、健常者の作品にもよくある表現スタイルだ。この反復の意味するものは何であろうか。ひとつには、反復によって自己の不確かさをより確かなものにしたいという衝動かも知れない。彼の了解への拘泥は、まるで自分、そして世界を知りたいという衝動と、その強度を増すための無限に循環する上書きのようである。

作:川島 清一
また、川島が描いている「文字」は、われわれが普段身近に使っている漢字に似ているが正規の漢字ではない。それは、制作者が知的ハンディに加え聾唖というハンディももっているため、そのことも関係するのか彼は文盲である。しかし、彼の呪文のように繰り返される描画から文字を連想するのはたやすい。といっても、世界のどこにも存在しない文字(彼独自に考案したもの)であり、形象も西夏文字や女真文字を連想させるほど、バランスも絶妙で、フォルムといい、その完成度は高く美しい。

その筆致から漢字へのアナロジーであることは確かだ。想像するに、彼は認知できないでいる漢字をすらすらと書きたかったのではないだろうか。「漢字」は彼にとって彼の外側にある規範の象徴であり、その意味で健常者のメタファーでもある。「漢字」を書くことで障害者という位置を脱し健常者として認知されたい、そういった願いが見るものに伝わってくるような、そんな作品に仕上げられている。
 
作:上野芳孝
 
 このように、知的障害を背負わされた彼らに、こうした常人を越えた突出した能力が備わるのは、一つには生物学でいう Trade off という、知的ハンディをもつ分、そうでない他の分野に特化された能力を所持するといった捉え方もできる。何れにしても、その作業密度には圧倒される。  
   
   
   
   
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