キャンパスからの遠望 |
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修論の完成のため頭がいっぱいなので、そのテーマに沿った内容に触れます。 ゼミでは主に「もの」に関する資源をどう分配するのが最適か…そんな論文(佐藤仁『「持たざる国」の資源論-持続可能な国土をめぐるもう一つの知』(東京大学出版会、2011年))が資料として使われている。それというのも僕のキャンパス(地域資源マネジメント科)には、GEO (地球)ECO (環境・生態系)SOCIO(地域社会)の三つの学科が設立されていることからくる。特に僕のゼミでは、環境社会学系の資料が多く使われる。 それはいいのですが、実は目に映る風景と現実の問題は、必ずしも重ならないというややこしさがある。藻谷浩介さんが良く出す例に「渋谷の交差点は今日も若者で溢れている…」、でも現実は、お年寄りも多くシニア世代もたくさん闊歩しているという。こういったイメージの刷り込みから学問も逃れられないのかもしれない。 |
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のどかな田園風景に囲まれたキャンパスがある豊岡市は、コウノトリの育む農法でも全国的に知られている。その豊岡市の平成27年度白書を見ると、H25 年度の産業別市内総生産額(名目)は、第 1 次産業が 2.3%、第 2 次産業が 22.2%、 第 3 次産業が 74.7%、関税等が 0.8%を占めている。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(豊岡市平成27年度経済白書より) |
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イメージとしての田園の中身は、2.3×77.8/100=1.7894% ということになり、目に映る風景とはおおよそ違っている。これは何を意味するのか……。 今風に言えば、膨大なるサービス残業で農業が回っているということだ。恐らく兼業農家のほとんどが、第2次産業や第3次産業の生業のほかに、休日や有給休暇をとって農業に携わっているのだろう。云わば、農業というシャドウワークともいえる。 いつもお世話になっている元区長も仰っていたが、野菜は買った方が安いんですが、どうしてもこの風景を残したいと感じているんですということ。なので、僕にも隣の空き地で家庭菜園をやりませんかと勧める。一応「研究で忙しいので何れ……」とお伝えしている(ちょっぴり気が引けてます)。 |
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(豊岡市平成27年度経済白書より) |
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「農村ジェンダー」という概念がある。僕も昨年のゼミで、養父市から派遣された女性のゼミ生から聞かされた。こちら(但馬)に移ってから、どうも腑に落ちない事態があちこちに散見するのだが(村の総会ではお茶当番は女性だし、役員には女性は一人もいない等々)、都市の感覚で色分けして女性のジェンダー論に当てはめても、どこにも引っかからない地域の関係性が「農村ジェンダー」というフレーズを聞いてストンと落ちた。先程指摘した、農としてのシャドウワークも実はここに入る。なので、いくら産業構成比率をいじくってみても地方の実相は浮き上がってこない。数値化されない、裏のデータがあるからだ。それも大変貴重なデータ、つまり地域資源になる。そしてそれは「もの」ではなく「ひと」あるいは「人と人の関係性」だったりするのだ。ここを資源としてカウントせずして何を資源とするのか。 僕の関心ごとは、正にここにある。 恐らく都市も地方も、最も重要な資源は、「ひと」及び「人と人の関係性」、あるいは「人と人の協働性」だろう。もちろん、情報も重要な資源であることには相違ない。しかし、その情報を精査し、その価値を見出すのも人、あるいは人と人の関係性だろう。 |
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コウノトリの郷公園から望む............ 晴れた日は、いつも外でお弁当 |
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吉本さんが、晩年「アジア的なるもの」で述べていたのは、この農としての関係性(協働性)だったと思う。つまり、西欧の様な”個”ではない、複数の人の集まりを、分割しないで捉える中で見えてくる姿だ。
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by Ikuta |
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もう一つある。名目 2.3% しかない第 1 次産業が 、この豊岡市の田園風景を保持(保全といえるほどではない)しているとして、第 3 次産業が
74.7%だということは、地域社会の問題をどう手当てするのが適当かというと、第 3 次産業にスポットを当てて手当てすれば、そこに従事している人々が
74% いる訳だから、その影響は一番期待される。けれども市のイメージ作りは田園風景になっている。つまり都市と地方の産業構成比率は大して変わらないのに、地方は第一次産業への予算配分が構成比率に沿わず多く、第一次産業への予算配分は地方の典型的な矛盾がある。なので都市への人口流出は止まらないという、 先程食事をしながらTVを観ていたら、GDPという数値で国の価値なり状態を評価するのはおかしい(クレイジー)と、新進気鋭のオランダの学者が言っていた。「やりがい」とか「幸福度」もカウントする新しい指標が必要になっているということ。その通り。だが、 ECO や GEO の先生方がいつも突っ込む質問に「やりがい」とか「幸福度」とか「郷土愛」とかを数値化なりオブジェクト化できないのか・・・・出来ないとしたらデーターとして評価できない、となる。ごもっともなご指摘だが、はたして数値化していいものなのかどうか・・・・。ただ、見える化して社会全体で共有しなければならない時期に来ていることは確かだろう。 さてどうやって。。 |
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書寫山圓教寺食堂: 天台宗別格本山 西国二十七番札所 |
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厚生労働省のデータを収集し、ネガティブデータを積算する中でヒントは見えてくるのでは。。 疾病数とその予算を算出すれば 疾病率もはじき出されるだろう。否幸福度指標というのはどうだろう。とくに精神疾患率は外せない。 児童虐待数、婚姻数と離婚数、薬物違反数、自殺数、ホームレス数、児童福祉施設数と利用者数…… こういった風にネガティブデータを積算して国の姿に反映させることをするなかで、僕らの社会は何が欠けているのか、そして、それを手当てするには何を必要としているかが見えてくるはずだ。 シャドウ・データあるいはネガティブ・データは、社会をポジティブに変革するうえでとても重要なデータになる。人間良いとこ取りは出来ない。 |
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