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2009 --2016
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記録的な大雪だそうです。

ご無沙汰しておりました。ここ但馬は、豪雪地だったことにようやく気付きました。僕の家は、集落で一番の奥で、その分雪は溶けずにいます。でも、ここに移り住んで今年の五月で丸五年になります。二・三年前までは、ここの冬が寒くて寒くて耐えられませんでした。けれども不思議ですねぇ、今では暖房を利かせて20℃を超すと熱く感じます。雪国の身体になってきたんだな~とつくづく感じます。

我が家の庭.......実際はもっと積もりました;;
さて、今年は修士論文を仕上げる年でもあります。テーマの絞り込みも大分出来てきました。そのテーマは、お隣の養父市の山奥は大屋町で20年以上続いているアートフェスである「うちげぇのアートおおや」の展開についてです。特に知的障害者の方々の作品と、それらが、これからの地域資源に十分になりえるといったことを導き出したいと思っています。

『「うちげぇのアートおおや」の試みー知的障害者アートの可能性ー』(仮題)

一応仮のタイトルです。

by 川島清一
「うちげぇのアートおおや」に、知的障害者アートの作品が展示されるようになったのは2009年からで、事務局のKさんのお子さんが、出産時に高熱を出し障害をもって産まれた、という経緯があったことが契機になったということです。このアートフェスのプロの方々の木彫や家具、そして陶芸や絵画、書もいいのですが、作品の密度やプリミティブさ、そして表現の原初が感じられる知的障害者の方々の作品に大きな感動を覚えます。

文字に見えるのですが、実は作者の創作文字?です  by 川島清一
僕の通うキャンパス(兵庫県立大学大学院)は、通称コウノトリキャンパス と呼ばれるように、日本で最初にコウノトリの野生復帰を成功させた機関が前身です。ご存知の方も少ないと思いますが、実はコウノトリは一度絶滅しています。2005年の人工繁殖したコウノトリの放鳥まで、何と40年の人工飼育を続けてきました。何のために.........。以下↓キャンパスのお隣にある兵庫県立コウノトリの郷公園HPのコメントです。

野生復帰の意義

コウノトリ(Ciconia boyciana)は,世界で極東地域にのみ生息する大型の肉食性鳥類であり,湿地生態系の食物連鎖の頂点に位置する頂点捕食者です.日本在来の動物であり,大陸との断続的な遺伝子交流を行いながらも,日本列島の生物群集のなかで進化してきました.

この野生絶滅した種を野生復帰させることは,この国本来の生物群集,特に近過去まで生息していた但馬地方の地域生物群集を復活・再生し,健全な生態系を取り戻すことに大きな意義・目的があります.また,この取り組みを成功させることは,他の野生絶滅種の野生復帰及びこのことによる地域生物群集の復活再生と健全な地域生態系の再生,ひいては地域生態系のサステナブル・マネジメントに向けて,国内外に明確な展望を与えることになります.

豊岡のコウノトリの例に見られるように,歴史に裏打ちされた地域生物群集の復活こそが生物多様性回復の真の意味であることは言うまでもありません.生物は地域生物群集の中で進化してきたからであり,そのことの証拠及び望ましい環境目標は地域の歴史に求めるしかないのです.
 先日、院の講義「野生復帰概論」が終了しました。授業の最終日に、パワーポイントを使って各受講者の選んだ絶滅危惧種の野生復帰までをマネジメントしプレゼンしました。僕は「ムラサキ」という植物を選びましたが、植物なので、正式には野生復帰ではなく「植え戻し」になります。何故「ムラサキ」なのかというと、万葉の昔に多くの歌に詠まれていることに惹かれました。

あかねさす紫野行き標野行き 野守は見ずや君が袖振る
(額田王 巻1-20)

紫草のにほへる妹を憎くあらば 人妻ゆゑに我恋ひめやも
(大海人皇子 巻1-21)


 
「ムラサキ」の花............「ほぼふつうの植物図鑑」より(花は白です)
「野生復帰概論」を受講して気付いたことは、絶滅危惧種にあげられる生物は、ほぼ例外なく生息するうえで大きなリスクを抱えているということです。例えば「ムラサキ」でいえば、もともとは日本全土に自生していたのですが、発芽率が低い上に食害に遭いやすく、ウィルスや暑さに弱いため、現在ではほぼ自生地はありません。西日をさけた日向か、半日陰の水はけのよい場所が適地であり、乾燥地には生息できない。

鳥類でいえば「シロチドリ」のように、海辺の砂地に排卵するので簡単に捕食の対象になり、また魚類の「アユモドキ」は、河川の溜まりにしか住めず、護岸工事の整備がすすんだ日本では、溜まりそのものが激減したため生息が難しい.......と大体そんな感じです。つまり、僕らが、近代化によって前近代の環境や生態系を破壊したその結果として絶滅危惧種が生まれたということになります。

「アユモドキ」............Private Aquariumより








「シロチドリ」の雛
そんな危うい種を何故僕らは保護したり、元々あった環境を保全しようとするのか.........。

この問いは、前期に履修した「生物学概論」の初日の授業で、担当のN講師の応えが合点するものだったので紹介すると、それは「そういった風景が美しいから」。絶滅を倫理に置き換えるのではなく、美意識として語った先生の言葉に痛く胸を打たれたことを記憶しています。

何を言いたいのかというと、知的障害者として括られる彼らの存在は、近代化の原理でいうと社会的負荷要因ということになります。そのことで昨年神奈川相模原市の障害者施設で19人もの利用者が元職員に殺害されました。僕らの社会が、如何に市場原理が貫徹しているのかの裏を取った事件ということになります。彼ら知的障害者を包摂できる社会と出来ない社会、どちらが生きやすい社会だろうか。。

ハンディーをもって生まれたひとびと、LGBTのひとびと等、多様性を包摂できる地域社会は、経済的状況が余裕がないと成立しない。オバマ政権に代わって生まれたアメリカのトランプ政権は、アメリカの退潮を示す象徴的な事例だが、それを支えた「感情」は、ポストリアル、ポストトゥルース、つまり本音を語ること、そして、ポリティカル・コレクトネスという建前を否定するものだった。この感情は、アメリカの理想、そして世界の理想の”疲れ”というかリバウンドだ。経済が落ち込むと、社会の体力が落ちて包摂性をもてなくなる。
 
by 田和研二郎
  こういう時だからこそ敢えて生物多様性や生態系の保全を唱える意義がある。ただし、「野生復帰概論」でも学んだのだが、持続的に多様性を保証するには、経済と連動していなければ只の「絵に描いた餅」 でしかない。その意味で、知的障害者の方々の作品をマーケットに乗せるべきだし、そのことが可能だと僕は考えている。そして、このことが今年の研究テーマになります。
   
ご近所