神奈川県立歴史博物館で開催中の「ハマヤキ故郷へ帰る」(横浜・東京−明治の輸出陶磁器)を観た。

「芸術は、経済から限りなく離れていること」・・・・・といった幻想(刷り込み)がある僕らは、『輸出陶磁器』というフレーズを目にした途端「なあんだ。。。」といった一段下位のものをみるモードにシフトしてしまう。
 
今回、縁あってこの展覧会を観る機会をもったが、会場に一歩足を踏み入れた途端、それまで自分の持っていた貧しい明治の陶磁器のイメージが気持ちよく吹き飛んだ。

そもそも明治期の工芸の実状を僕らは情報としてもっていない。このことは、明治期の工芸をメディアが取り上げるに値しないと決め込んで伝えてこなかったのか、さもなくばアカデミズムが、同じようなスタンスであったのか、何れにしても歴史に埋没していたことは事実だ。
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(「上絵金彩花鳥図卵形花生」 錦野吉二 ...... 図録より)
何ともユーモラスで愛くるしいこのフォルムは、いったいどこから来るんだろう......。そんな素朴な疑問がわく上の画像(「上絵金彩花鳥図卵形花生」)だが、図録に記載された資料によると明治中期〜後期とあるので、西欧への輸出も軌道に乗り、先方のデザイン的なニーズにも応えられている余裕が感じられる。因みに、主催者側によると、フォルムが卵型なので復活祭に使われたものでは....ということだった。

それにしても手を抜かない。細部に渡って緻密に描かれていて、どれも凄い密度だ。

こういった作風が可能だった理由には、未だ近代化が初期の段階だったことで、価格に反映する人件費の比率が極めて低かった事もあげられるだろう。いくら時間を掛けても価格にさほど影響しないということが、結果として仕事の密度を上げていたとも言えるかも知れない。しかし、その表現をよしとする消費者が多くいたと言うことは見逃せない。

(高浮彫風神雷神花瓶 初代 宮川香山..... 図録より)


なかにはエログロナンセンス張りの凝った花瓶もある。今なら「ちょっとヤバクねーか」といった観もあるが、よくみると物語性があって、つい細部まで目で追ってしまい愉快ですこぶる楽しい。

高浮彫風神雷神花瓶なども、かなり遊んでいるので、もうやることが無くなった明治も晩期の頃の作風かと思いきや、図録では明治初期とあった。なので西欧の側から受けたリクエストとばかり思っていたがそうでもなく、日本側で自由に構想し制作したと見るべきか? それにしてもキッチュだ。

(「高浮彫南天ニ鶉花瓶」 初代 宮川香山 ...... 図録より)



僕らは、花鳥風月のような具象を平面に描かれた表現として見るとき、ある約束事の上に立って花や鳥を見ている。そこでは、数ミクロンの厚みしかない紙やキャンバスの布の上に載った絵の具を見て、ある量的な膨らみや暖かさなどを感ずる。
 これらの感覚は、明らかにイリュージョン(錯視)なのだが、実は僕らのもつイリュージョンは一つではなく、それぞれが所属する文化のなかで、それぞれのイメージを構成している。時代によっても、地域によっても喚起するイメージはそれぞれだ。現在一般的になっているのが、ヨーロッパ・ルネサンス期に生まれた遠近法だが、僕ら日本人は、線の強弱や勢いによるいわゆる線描という遠近法をもっている。

展示されたハマヤキをよく見ると半立体?のものも多い。僕は、鎌倉彫出身なので、絵画のように2次元平面でもなければ、彫刻のような3次元立体でもなく、出っ張っている平面表現なので2.5次元?と例えたらいいような半立体表現につい目がいってしまう。

浮彫を手掛けていると、作業手順として初めは、平面に図柄を描く。これは、2次元の表現になる。それを、半立体的に凸の表現へと進める。なので、平面そして凸、平面そして凸とイリュージョンの使い分けを繰り返すことのなかで「ある誘惑」に駆られる・・・・・・それは、平面のイリュージョンと、半立体のイリュージョンを同居させたら、どんな空間が現れ出るのだろうか・・・・・・と。

ハマヤキの陶工達も、この誘惑に強くさらされたと想像できる。写実とは何か?西欧のリアリズムと伝統的な日本のリアリズムの間で、プライドを掛けてハマヤキ陶工達は凌ぎを削っただろう。




キッチュなものばかりに目を奪われるのは、普段そういったスタイルのものをあまり目にしないので仕方ないが、展示品は、そんな作風のものばかりではない。今でも違和感なく、とてもお洒落なものも多い。上の画像のような趣味の好いティーカップは、今市場に出たら大ヒット間違いなしだ。装飾も気品と格調があり決してうるさく感じない。

ミニマルがベーシックなデザインとして定着して久しい。そんな僕らの日常のなかで明治の作風は、僕らに「日本は、何か大切なものを捨ててきたのでは・・・・」といった本質的な疑問を突きつける。


会期は6月22日迄ですが、未だ若干ありますので是非、明治の気骨を会場で味わって下さい。期待を裏切らない魅力的な展覧会だと思います。
神奈川開港・開国150周年メモリアルイベント
横浜開港150周年記念 「横浜・東京−明治の輸出陶磁器」

場所:神奈川県立歴史博物館
会期:2008年4月26日(土)〜6月22日(日)