中也詩椀 |
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「菜の花畑で・・・・・」 | 「風にふかれて・・・・」 | |||||||||
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φ17 × h 11 (cm) |
中原中也は、一番好きな詩人です。中でも『春と赤ン坊』そして『雲雀』は、悲しみも喜びも突き抜け、傷つきやすい作者の心を抽象的なまでに昇華させ無化しています。そして、その詩情は更に僕らの魂の奥く深くまで響いてきます。 漆は粘度が強いので文字を書くのにはあまり適さない素材です。でも、どうしても中也の詩は書いてみたかったので、そのワンフレーズを一気に椀に描きました。 この椀は、とても人気があって、伊豆山の旅館蓬莱様を始め多くの方々に使っていただいています。感謝。 |
春と赤ン坊 |
雲 雀 |
菜の花畑で眠つてゐるのは…… 菜の花畑で吹かれてゐるのは…… 赤ン坊ではないでせうか? いいえ、空で鳴るのは、電線です電線です ひねもす、空で鳴るのは、あれは電線です 菜の花畑に眠つてゐるのは、赤ン坊ですけど 走つてゆくのは、自転車々々々 向ふの道を、走つてゆくのは 薄桃色の、風を切つて…… 薄桃色の、風を切つて しろくも 走つてゆくのは菜の花畑や空の白雲 ――赤ン坊を畑に置いて |
ひねもす空で鳴りますは あゝ 電線だ、電線だ ひねもす空で啼きますは ひばり め あゝ 雲の子だ、雲雀奴だ あーを あーを 碧い 碧い空の中 もぐ ぐるぐるぐると 潜りこみ ピーチクチクと啼きますは あゝ 雲の子だ、雲雀奴だ 歩いてゆくのは菜の花畑 地平の方へ、地平の方へ 歩いてゆくのはあの山この山 あーをい あーをい空の下 眠つてゐるのは、菜の花畑に 菜の花畑に、眠つてゐるのは 菜の花畑で風に吹かれて 眠つてゐるのは赤ン坊だ? |