名 人

 今日、あくせくと個展の追い込みをしていたところNHK FM からDJのゴンチチが、先日ここでも触れたJoäo Gilberto の話題を出していた。

おっと、ここでも聴けるのかな〜・・・・・、と耳をそばだてていたところ横浜で開催された7000人規模のコンサートでのJoäo Gilberto の奇行?のお話だった。

short column 「深まる秋」でJoäo Gilbertoに触れたことから、意外にも二人の方から彼に関するメールを頂いた。一人は工芸界の戦友?のような方Nさん(音大出身)でJoäo Gilbertoが未だ一度も来日したことのない大物アーティストで「ドタキャン」他奇行の持ち主であることを伺った。ボサノバの創始者アントニオ・カルロスジョビンも相当やばいアーティストだったというからすんなりとJoäo Gilbertoの奇行も納得できた。

もう一通のメールは、先日ここでも触れたスイスのMさんからの素直で爽やかなボサノバの感想だった。

Joäo Gilbertoのコンサートのことだが、案の定、開演時間が来ても本人は現場に訪れず、場内放送は「暫くお待ち下さい」を一時間以上繰り替えし続けていたが、誰一人苦情を主催者側に詰め寄るものはなく、「やっぱな〜」「でも、ドタキャン」じゃなければ儲けものだ・・くらいの余裕で開演を待ち続けたそうだ。

結局一時間以上遅刻してきた彼は、ギター片手に舞台に現れ一曲歌い上げたがどうもギターのチューニングが気に食わず、一曲ごとに「アイアムソーリー」と繰り返し全くノリのない硬い演奏で終始し、何曲か演奏した後舞台裏に消えてしまった・・・・・。

ありゃ、もしかして・・・・・・

っと観客が不安を持った五分後再びギター片手に現れ演奏を再開し、並はずれた素晴らしい歌声を聞かせてくれたそうだ。

結局チューニング前1時間、チューニング後1時間、計二時間以上のスリリングな演奏に酔いしれた観客はアンコールの拍手を送り続け、彼自身も相当満足したコンサートに自分自身も拍手をしたそうな。

そして、じっと目をつぶりながら五分ほど観客の拍手を全身に受け満足げに舞台に立ち続けていたがアンコールに応える様子もなく、その後二十五分間以上ジッと微動だもせず立ち続けているのでスタッフが具合でも悪くしたのかと二度ばかり確認しにいったが、別段体調を壊した様子もないのでそのままそっと引き下がったそうだ。
 依然として彼は鳴りやまない満場の拍手をまるで月の光を浴びるかのようにジッと立ち尽くし、暫くしておもむろにそして、満足げに今までアンコールでは選曲したことのない「ボンファに捧ぐ」などの名曲を8曲ほど演奏しフィナーレになったという。

嘗て、落語界伝説の名人古今亭志ん生は、酔っぱらって高座に上がり、羽織を一枚脱いだ後コックリコックリ居眠りをはじめた。観客は怒るどころか、志ん生の寝姿をけらけら、けらけら笑い、しまいに場内大爆笑となり、30分ばかり経ったところで目を覚ました志ん生は、おもむろに羽織を着て頭を下げ楽屋に下ったところで場内割れんばかりの大拍手・・・・・・・

いやー、そんな歴史的出来事に立ち会ってみたかったな〜とうらやましく感じました。本当の名人とはこういった芸人(アーティスト)のことを言うのだと思います。

そうだ、明後日銀座の個展の搬入です。

仕事仕事。

ではまた。。。

「庭のでんでん」

 

BACK

INDEX