<後編>


「東大寺二月堂のお水取りとして知られる仏教的年頭行事が修正会、修二会として、民間に定着したのは10世紀末ごろであった。」



「修正会や修二会の際に牛玉杖で堂舎や床板を敲いたり、鬼走りとかダダなど大きな音をたてたりする所作も究極、後戸に住む精霊の霊威を喚起する呪術につながるものであった。」「そのような守護神の祀られる聖なる空間としての「後戸」が成立したのは、ほぼ11世紀後半であり、「縁の下」「床下」などとともに、それはすぐれて中世的な所産であった。」



「この追儺(ついな)儀礼において」「充満した群集の中からツブテが打たれ、一種の狂躁状態が現出している。」「すなわち堂内の参列者による鬼を打つ行儀と堂外の群集によるツブテを打つ行為とは不可分であったと考えられる。」ツブテ打ちが「「狼藉」と呼ばれていようと、やはり邪気・罪穢を払い、浄化と再生を願う修正会において欠くべからざる「オコナイ」であったに違いない。」
「修正会の追儺におけるツブテの「狼藉」は、むしろ邪気・穢気を払い、吉祥を招くための一種の「振舞」「施芸」であり、堂中で演じられる「鬼走り」の儀礼は、これを象徴的に示す呪術的所作であった。」



「修正会における追儺儀礼の記事」では「龍天・毘沙門天の所作に応じて参列者が加持された牛玉杖をもって鬼を追いまわして打つのである。追儺が鬼とほとんど同義と解されているばあいもあるが、この鬼はまた達魔・ビ那夜伽(梵語Vinayakaで障礙神の意)とも記されていて、これは明らかに、鬼に象徴化された障碍・穢悪を打ち払うことを意味する所作であり、年頭における浄化と再生を祈る修正儀礼を最も端的に表徴するものであった。」



「12世紀ごろには、その西惣門辺に居住して、修正会に千秋万歳を演じた散所法師の存在が知られるから」「の追儺儀礼で鬼役を演じたのが散所法師であったとすれば、それはまた上述のツブテの輩や印地の党と全く別のものではあり得ない。」。
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「六月の祇園会の祭礼において」「白頭巾・朱衣姿に棒を携えて神輿を先導し、警固と不浄物撤去に従ったことで有名な犬神人は同時にまた、京の修正儀礼にも深くかかわっていた。



「延年の芸が修正会を介して猿楽と深くかかわっており、また山伏の芸能と不可分であったことは最近の研究によって明らかにされている。」「吉野大峰山について、北山郷の前鬼村の人びとは自ら役行者の弟子、義覚・義賢の子孫と称して鬼の子孫との伝承を持っており、単なる宿ではなく大峯山の中台たる深仙宿を支える存在としての自覚と役割を担っていた。」



「11〜12世紀、山伏・修験者など山岳信仰者のための峯中宿や警固衆が形成されていった。」そして「峯中宿の管理に奉仕し、その信仰や儀礼にも深くかかわっていたこれらの人びとが警固衆と呼ばれ、その奉仕料が「ツブテ」「鬼供養」と呼ばれていた。」
常滑市民俗資料館
「11〜12世紀、祝福芸としての千秋万歳がはっきりと、その姿を現し京中の辻ごとにツブテが打たれるようになった時期とも合致している。「ツブテ」「それを打つことが「民戸景気以2豊年1」として歓迎され、禁ずれば世間飢饉の因になると「京中雑人」らによってみなされていた。



延々と抜き書きノートを連ねてしまったが民俗事例に重層的に内在する日本の分厚い歴史を覗いてみる快感とでもいうのだろうか。山岳信仰・再生と不浄・鬼・飛礫・猿楽などなど、いまでは顧みられることの少ない項目ではあろうが、以外に神社の祭礼には大衆が群れをなし、的を奪い合い、裸男に熱狂する。芯男か神男に変身したように、かつての芯男は千秋万歳の河原法師であったのではなかろうかなどと推測するのだが。



そして、この鬼やツブテ、千秋万歳やら山伏・修験の姿が明確に立ち上がってくる、まさにそのときに常滑や渥美の陶器生産が急速に発展していくのだった。観光や鑑賞の対象となってその姿を今にとどめるモノやコトに内在する歴史性に触れると、その奥深さだけでなくエネルギーにも共振する気分になるのだった
常滑市民俗資料館





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