『落書き錫研 Zushi』





久し振りの Today's working です。


『落書き錫研 Zushi』制作中です。



鎌倉彫出身の僕は、装飾が前面に出る仕事をしているときが一番揺らぎがない心持で作業が出来ます。それは、鎌倉彫の出自が仏師ですから、当たり前ですが仏師が本来引き受けていた仕事をしているときが、心穏やかに矛盾なく仕事に打ち込めることが出来ます。

もちろん、椀など一般的に言う塗り物の仕事はどうなのかというと、それはそれでいろいろ工夫が必要なので(例えば、今の生活に沿った器とは何かを考えること等)そのことを含め真摯に制作に取り組んでいます。ただ、所謂漆器を制作しているときは、「漆芸」一般にアイデンティファイしているので鎌倉彫の範疇から一旦離れます。別の言い方をすると、近代化に適応しているとも言えます。なので江戸時代のウルシ職人にはなかった「構え」が必要になります。

これだけ石油製品が普及している時代に、前近代の産物である「ウルシ」を扱うのは、デザイン面や実用面で相当工夫をしないと受け入れられることは正直難しいと思います。そこには、ある”無理と”いうか闘いがあります。
 
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02/22 落書き錫研 Zushi
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落書き錫研 Zushi 把手部.........真鍮に痕
江戸の職人が淡々と仕事に打ち込んでいた状況とは、残念ですが今の状況は様変わりしています。それは、年々漆の生産量=漆の需要が少なくなっていることを見れば理解出来ます。想像以上に危機的な状況です。



おっと、作業現場を伝えるのがこのページの眼目でした。


『落書き錫研 Zushi』の制作は、これで二作目です。大作なのでおいそれとは制作に掛かれません。銀座 ギャラリー厨子屋さんからの提案で、HPにアップしている厨子はお店に揃えたいという趣旨から、今回すでに欠品している作品をリストアップするという流れになっています。


いつも、オリジナルを超えたい・・・・といった姿勢で制作していますので、今回もバージョンアップを試みています。

先ずは、あまり前面に出ない殆ど目立たない把手の部分ですが、真鍮製の板金を磨き、そこに落書してみました。これは扉の Top の部分に象嵌されます。
あまり忙しいということは良いことではないのですが・・・・忙しいです;;


ちょっとフリーズしてました。申し訳ない。


さて厨子の本体ですが、「落書き錫研 Zushi」は、内部の構造が複雑に出来ていますので、棚やボックスは、それぞれバラした状態で漆を塗り重ねることになります。

今回は、仕上がりが渋く重厚な鎌倉彫独自の手法である「煤玉蒔地」を手掛けてみました。こんな感じで ↓ 進めます。
 




















煤玉蒔き地
 
 始めは下地刷毛で作業していましたが、ゴミが気になり生ウルシを漉して上塗り刷毛で塗ることにしました。ちょっと時間が掛かり過ぎで、この点工夫が必要でしょうか。。


昔、SAVOIR VIVREでの個展の際、ドイツの自称現代音楽家という方に「貴方の作品はゆっくりとしたテンポで、かつ重厚ですね」と言われたことがあります。音楽用語で何て言われたか忘れてしまったのですが、調べてみると「グラーヴェ」に相当するようです。

まっ、僕は仕事のテンポは確かにゆっくりとしていますし、色々考えながら作業もしているので、結局作品の密度は上がって結果として重厚になるのかも知れません。自分としては、褒められているように感じて悪い気はしません。
 
 












落書下地












落書仕上がり
 
 大きく重い本体の外枠に煤玉を蒔くのは、結構大変な作業になります。好きな仕上がり具合にするには仕方がありません。何だか、手が掛かる方、手が掛かる方へと流れているように感じます;;;



錫の磨ぎがスムースに行くように、24時間ムロには電熱器をつけっ放しで保温し漆の乾きをよくしています。お蔭で電気料金は春秋の倍以上になります;;明日第二和生園さんへ搬入し黒川君に研きを頼む手筈になっています。でも、明日は大雪の様でちょっと心配です。


そして本日ハレ部の背景を飾る金箔押しを厨子屋さんに頼みました。
 
 
本体が仕上がった後、特性の把手や蝶番を取り付けます。把手は本体から抜けて仕舞わないよう裏側にビスを取り付けた後本体に象嵌します。

把手の裏にビスを接着









top に象嵌
今回は、錫粉を少し大粒にしたので、より金属的で重厚な仕上がりになりました。この時期は漆の乾きが悪いので、充分に硬化させないと幾ら磨いても光沢が上がりません。その点神経を使います。一日中ムロの電熱器を点けっぱなしなので、電気代は鰻登りになります。春が待通しいところです。
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蝶番の選定にはずっと苦労しています。当初、三河仏壇の飾り金具師Mさんに頼んでいましたが、神輿の金具作りが忙しく、こちらの注文には応えてもらえなくなってしまいました。しっかりとした厚みがあって、丁寧に仕上がっていないとどうしても安っぽく見えてしまいます。このところ、京都の金具屋さんの蝶番をグラインダーと砥石を使って隅丸にし、面取りをして使っています(高価です;;)。



調度品は、細工やデザインが良いことは当たり前で、意外かもしれませんが取り付ける金具で決まり!です。たかが蝶番、されど蝶番です。皮革製の鞄などと同じで、良い金具を入れてのデザインとなります。金具は重要です。
の部に特設したextra box には、金箔を落書したものを背景に据えます。ここ最近の「落書シリーズ」全般に言えるのですが、描き過ぎるきらいがあります。隙間が多いと『抽象と感情移入』(ヴォリンゲル)じゃありませんが、空間恐怖というか手抜きの様に感じてしまう自分がいます。なので隙間なく描き込もうといった衝動に駆られます。未だ未だ足りないように感じたりしているのですが。。
 
 上の↑画像の段階で煮詰まってしまい、一旦休止。
 
 何とか自分と折り合って完成。

今日、梱包を済ませ、この辺では一番融通が利く佐川急便で会津へ送りました(ゆうパックは、この大きさだとあっさり断られる可能性があります;;;)

傑作です♪     この厨子の生まれた経緯は、こちら⇒『落書き錫研 Zushi』