(特注の蝶番)







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ど~しても欲しかった厚み1.8mmの蝶番です↑↑。 格好いいでしょ♪

この29日、日本橋三越で、厨子屋さんの小さな企画がある。

厨子屋さんにとって、作家ものの百貨店での展示は、いろいろな意味で負担が大きくなる。しかし、新しい試みを人に見てもらうとしたら、その動員数がgalleryとは雲泥の差があるので、発表することのモードを変えれば、百貨店とのお付き合いも大きな意味を持つ。そこで、今回百貨店での古文字厨子の展示をする運びとなった。

サイズが少し大きくなることで、それにマッチした蝶番も必要となり、前回お願いした愛知は刈谷市の仏壇金具師・村井義幸さんに作って貰うことにした.......................

 何しろ、この方は、お正月のお休み以外は、一年中日曜日も休まず、夜の11時過ぎまで仕事を続けるという仕事の虫なのです。。。
 
仕事も、数ヶ月先まで埋まっていると言うことでしたが、そこを何とか無理をして頼み込んだ。そして、先日、毎晩2時過ぎまで掛けて仕上げて下さった蝶番が、手元に届きました。

(椀の図面と新蝶番)
実は、この蝶番を制作して頂く前、彼から悲痛なメールを頂いた。

「百円均一で蝶番が2個100円で買えてしまうのを見ると、とてもじゃありませんが、普通の工賃での請求は出来ませんので、以下の方法で試してみて下さい」。

18mmタイプのサンプルですが、
あれなら、ホームセンターや東急ハンズで売っている材料と道具だけで
製作可能ですので、挑戦してみては如何でしょうか?
(硫酸・硝酸・炭酸水素ナトリウムは印鑑だけで薬局で買えます。
用途を訊かれたら「銅板の酸洗いに使います」
と言えば、大丈夫です。)

 材料
  真鍮の厚板
  内径3㎜の真鍮パイプ
  外径3㎜の真鍮棒 
  銀蝋(早蝋か、7分蝋で大丈夫です)
  銀蝋用フラックス
  クリアラッカー(出来ればインクララック)
 道具 
  糸鋸の弓と刃(地金用1~3番・パイプ用02~04番)
  ガスバーナー(カセットボンベ式で大丈夫です。)
  耐火レンガ
  電動ドリル(出来ればボール盤)
  ドリルの刃(1.5㎜と3㎜)
  ヤスリ・キサゲ・棒ベラ(外周の処理用)
  キリンス(蝋付け後の酸洗い用の溶液。
       硫酸と硝酸の混合液を10~15%に希釈したもの)
  炭酸水素ナトリウム(中和と研磨用)

 上記の物を全部新規で揃えても、25000円以内に収まると思います。 
サンプルを見て、寸法通りパーツを切り出し、
鑢で整え、断面を磨き、穴を開けて蝋付けして、
酸洗い後、、ラッカーなどでコーティングすればば出来上がりです。
 
 叩いて蝶番を作るには、特殊な鏨や金床、金槌・木槌・
叩いて管を丸める技術が必要なので、
結構時間が掛かるとは思いますが、
サンプルの様な蝶番の方がハードルは低いと思います。

 ただ、私が作っても3倍ぐらい時間が掛かるので
価格も高くなってしまいます・・とりあえず作ってみましたが、
あんな小さな蝶番が1個2000円とかになってしまうと
ちょっと現実的な値段ではないように思います・・・

(新古文字厨子生地)
いやいや;;;いくら僕が工作や修理が好きだとはいえ、この時期この蝶番制作は無理です;;;


そこで「蝶番の価値を決めるのは、僕であって貴方ではありません。僕がそれだけの価値があると言っているのですから、是非お願いします!」といって彼を落としたのであります♪

そこまで言うなら・・・・っと、毎晩2時過ぎまで酒をひっかけ、疲れを麻痺させながら完成させてくれたのが上の蝶番であります。ほんと~に、感謝!感謝!です。


実は、こんな風に面倒な仕事を、文句一つ言わずに(遠く離れているので文句が聞こえない?)こなして下さる方が他にもたくさんいらっしゃいます。。。

この厨子の木地も、厨子屋さんの本社である、会津若松のALTE MEISTERさんに頼み、複雑な曲面を工作して頂いています(穴澤さんありがとうございます)。
   






(お厨子図面)
そして、小さく複雑な曲率をもつこの厨子の内側に金箔を貼る作業も、超~面倒だと思う;;;;その箔押し(金箔を貼る作業)も、これまたALTE MEISTERさんにお願いしています。

気が付けば、こんなにも多くの方々のサポートを受けて、この小さなお厨子は出来上がっているのでありました。

(箔押しの上から描いた古文字たち)
もう直、蝶番を付け箔押しされた新しい厨子が、会津から送られて来る運びになっています。

どんな古文字を入れたらいいか、候補はたくさんあるのですが・・・・・・目下思案中であります。



以上、ゴールデンウィーク前の現場でした~~。