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2006年より、13年以上の長きにわたって投稿いただいて来た春鳶堂こと中野晴久氏の「常滑レポート」ですが、この十月をもっていったん終了し、舞台を「kitakinki-komonjo.com」に移して頂くことになりました。あっという間の13年間でしたが、上↑の画像をご覧いただいてもお分かりの様に、常滑という日本六古窯の一つである歴史ある地場産地の凋落を通して伝統工芸の「今」を語って頂きました。

始めは厳しい注文を投げ「小学生でも分かる文体でお願いします!」という”縛り‟で始まりましたが、素直に応じて下さり、軽妙なタッチで軽めの日常を切り取って頂いたとhttp://urushi-art.net/の管理者としては深く感謝する次第です。
この間、中野氏も常滑民俗資料館長を定年で退官なさり、専門の考古学を大学の方で講義するという生活にシフトなさいました。自由になる時間も多少できたことから、好きな畑でひねもす過ごすことも多い様子で、少し羨ましいところです。。

ハカセ(地元常滑での呼称)との出会いは、先月上京し katachi 21 主幹笹山 央 氏のネット講座に参加しましたが、この笹山 央 氏が「東君面白いところがあるけど・・・」と連れて行ってくれたところが常滑で、そこの陶芸家吉川ご夫妻のところでマメに家事を手伝っていたのが独身時代のハカセでした。ここでは、先日も特設部屋(未だ僕しか泊まった者がいない♪)に泊まらせてもらい、テニスを四時間も設定してもらった尊敬する大工牧野にも出会うことになります。
 
思い返すとハカセとの関係は、 katachi 21 の主幹笹山 央 氏の研究会も重なり始まった訳ですから優に35年を超すわけです。
 最近つくづく 思うのですが、ハカセや大工牧野、katachi 21 の主幹笹山 央 、そして、ここではその名を出せない友人のような、ピュアで誠実なひとには今後会うことはないだろうなぁと。自分が歳をとったということかも知れません。その行動範囲も限られてきましたし、若い時の様なエネルギーもなくなっています。それ故、そういった素敵な人に出会うこともないだろうから大切にしたいと願うところです。

ハカセに関して一番印象に残っているのは、未だ大工牧野に逗子の新居を建ててもらう前、神武寺という古刹の近くの「サツキとメイ」が暮らしていたような昭和の貸家に住んでいた頃、記憶だと一週間ほど、でも実際は4・5日程だったでしょうか、我が家に泊まりに来たことがありました。終日、我が息子二人(2歳と6歳)の相手を楽しそうにしてくれて、驚いたのは、その間1日も欠かさずフィアンセにラブレターを書いていたことです。
 そして、40年近くたった現在も、その奥方にお弁当を作り続けているのです(二人のお子さんがまだ学生だった頃は、その分までですから自分の分も含めて合計4ッ💦)。これは脅威ですし、ハカセの全てだと僕は思っています。そして僕のなかでのハカセのイメージは以下↓です。そう、孤高です。つまりやるべきことは全力やって、後は大きく期待せず達観しているといった風です。もちろん、ご本人は色々思うところあって、そんな格好よくはないと仰ると思いますが、僕は当たっていると思っています。
いま常滑レポートを読み返してみると、それは日本の伝統工芸と呼ばれる地場産業が、近代化の中でどのように移り変わっていったかが何気ないハカセの日常を切り取ることで伝わってきます。特にハカセ自身は宮仕えの身だったので、僕ら作家の様な自由度はありません。僕と二つ程しか違わないのでバブルも、また、その崩壊による地場産業の空洞化(基幹産業の海外移転)も行政側として経験しています。これは結構消耗したはずです。ハカセが現在畑に❝居る❞のも、そのことが大きかったのではと密かに僕は感じています。つまり癒しです。

先日お世話になった大工牧野さんも、以前の様にパワフルに仕事をすることは難しい様で、テニスを楽しみながら仕事も続けているといった様子でした。老いというものと上手く折り合いをつける歳にお互いなったなぁと感じる今日この頃です。
そして長く続けて来て頂いて気付くことがもう一点、それは送られてくる画像の質が格段に上がり驚くこと然りです。
先月上京し、もう40年近くの付き合いになる「KATACHI21」主幹の笹山 央 の現代工芸講座に顔を出した。先ずお互い歳をとったなぁというのが正直なところ。多摩美の講師を終え、この春から現代工芸講座をネットにて有料で配信している。大学においても工芸は嘗ての様な人気はない。

僕としては、初めから有料にするより、視聴してもらった後で評価を判断して頂き、その後に任意で振り込んで頂くといったビジネスモデルの方が時代に合っていると思うのだが。。でないと運営サイトをweb上に反映できない。というのは、アクセスする回路が始めから絶たれているので広報していないのと同じ構造になってしまう。頑張ってほしいのだが。。
ということで、ハカセも笹山氏も、そして僕も、それぞれの最終章をどう締めくくるかといったことを真面目に考える年齢になった。最近つくづく思うのだが、歳をとると、その性格は、己の生まれた始原に向かってどんどん遡行し「素」に近づいてゆくのではと。

ハカセに関していうとずーっと前にも触れたような気がするのですが、「誠実さは生まれつきのもので後から獲得することは難しい」と言った50年以上前に知ったロマン・ロランの言葉が重なってきます。この言葉は、僕にとってずっと無意識に引っかかっているもので、僕の場合、それを意思で乗り越えることの連続でした。僕が、吉本隆明に親和性を持つのも、氏が自分は生まれた環境が悪く、そこで性格が形作られたので修正するのが大変だったが、人間は意思でそれを乗り越えられるものだというもの。

でも正直、誠実さを生まれつき持っていることに憧れる。僕にとってのハカセ(中野晴久)とはそういった存在です。

長い間ありがとうございました。そして、今後ともよろしくお願い致します。感謝