インディアン恋文椀


インディアン絵文字恋文 落書きハート
底部

size: 13.5 × 8 cm
finish:錆仕上げ(外)+渋朱(内)........高台周辺は木地がうっすら見えるよう溜塗り、あるいは摺り漆
文字部:錫粉(蒔き放し)
木地:栃材

これは、殷墟文字ではありません。でも、『文字講話 第一話 「文字以前」』(白川静著)に殷墟文字と並んで紹介されていたアメリカ・インディアンの絵文字です。

恋文の差出人は b の印のある熊トーテムに属する少女で、対手は d の印のある山椒魚をトーテムとする氏族の若者です。

意味はこうです.......

中央の右に両方の道が丁度合するところがある。そこからもう少し向こうの方に行くと、左右に小さな池がある。そこを左に曲がると、二つの小屋がある。その小屋の左側の方に印がつけてあるのですが、彼らはみな洗礼を受けたキリスト教徒で、十字架が加えてある。その三人のキリスト教徒の一人である少女から、あなたにお会いしたいので、この小屋まできて下さいというような意味の手紙です。

この種のものは原住民の調査報告として、当時のアメリカ議会に提出されていて、B5判で七百ページを超える大冊だったと紹介されています(Annual Report. 1888 〜 1889)。その中に、このような絵手紙の例がたくさん収録されていて、これはその中で、大変可憐なラブレターであります。(白川静 『文字講話 第一話 「文字以前」』より)

僕は、漢字に限らず全ての文字に惹かれます(詳しくは、丁度七夕にあたる本日 Today's working に触れましたのでそちらをご覧下さい)。それは記号とはいえ、文字が立派な表現であるからです。それも、表現の萌芽にあたる時期と重なるところに、「人間」の発生を見るからに違いありません。