錫研き TAKU (卓)

( photo by Fujita )

( 1986.12.7 GALLERY SAVOIR VIVRE 個展会場)

size : 76 ×42× 5 (cm)   栃材

finish : 錫研き................錫粉を使った蒔絵の手法をとりました。黒く見える部分は,布着せして(節隠しのため蚊帳を貼りました)錆仕上げです。

細かく見ると当時としては,結構ラジカルです。表面は,使っている時に疵が気にならないよう意識して電気カンナで削痕を残しました。加えて,木口はチェーンソウで荒らしてあります(将来,割れが来ても気にならないよう)。

勿論,このコンセプトは,僕自身鎌倉彫出身なので「刀痕」からインスピレーションをもらっています。

 余談ですが,実はこの作品は,当時「ギャラリーワタリ」(現在の表参道にある「ワタリウム美術館」)のオーナーが,児雷也の様な格好でわざわざ我が家に見えて「ギャラリー始まって以来の工芸の個展をやってみたい!」と個展の依頼をしていき,そのあとドイツの美術雑誌の取材のため作品を貸してくれないか・・・・・・ということで持参して取材を受けたました。
 結局,作品の価格設定を他のギャラリーとは格差をつけて高くしろ・・・・ということにカチンと来た僕は(若かった(^^ゞ)「それは,できね〜」と言ったきり,個展の話はなくなり,作品も未だに返してもらっていません。何度か返却要請をしたのですが梨の礫です。

 後日,この話を僕の20年来のファンであるKさん(彼もワタリでウォーホールの描いたミックジャガーのシルクスクリーンを購入しています)に話したところ「それはもう返ってきませんよ,あそこは大竹伸朗さんも同じ目に会っていて裁判中ですから・・・・・きっとお宅のリビングで使われていますよ!」と言われました............とほっ。

 今写真をあらためて見ても結構カッコイイこの作品を,いつかきっと返してもらおうとは思っているのですが,そのオーナーは只者じゃありません。なんてったって,会って話した後僕は「下痢」をしましたから。

というわけで,作家は只只物を作っているだけじゃアカン!ちゃんと文書を交換して契約を書面で残さねば駄目!...........ということを痛感した出来事でした。(もう時効かな...........)