落書き錫研き折敷(M)

















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size:d 215 × w 300× h12 (mm)

finishi:錫高蒔絵(錆び漆にて落書き)



コ メ ン ト
『落書き錫研き』シリーズの一環です。


このシリーズを初めて発表したのは、お馴染みの六本木SAVOIR VIVREです。可成りの数のパターンがありますが、今回紹介したスタイルが、最もオリジナルに近いもので、SAVOIR VIVREの店長に「このスタイルが、一番アーティスチックだと思う」と褒められたことがあります。作者も同感です。

ただ、表面が結構凸凹なので、その点を気になさる方のために、縁だjけ落書きするパターンもあります。使い勝手から言うとそちらの方が良いかも知れません。しかし、表現の自由度からいうと、ここで紹介した全面落書きの方が、圧倒的に高いと思います。

正直言うと、僕自身表現する面積が大きく広いほど、自分を解放して、俄然エネルギッシュで楽しく表現できます。
時々、どうしてこんな表現が出てきたのかな〜と考えることがあります。それは、結構根の深い問題です。


 実は、漆工芸は、作業工程も多く、それ故昔から分業化されてきました。そういった事情から、個々の工程で作業を完結させることで、その善し悪しの責任を明確化させてきました。このことは、きちっとした外れのない仕上がりが保証されることに繋がりますが、一方定石通り仕事を進めますから、その自由度は低くなりがちです。


たとえば、陶芸などは、窯の質や、熱の伝わり方、そして、素材の選び方で、最終的な仕上がりが、偶然性を多く含み、そこに自由度と面白さがあります。漆工芸は、この「偶然性」がきわめて低い表現領域と言えます。僕が不満だったのは、この点です。


何とか「偶然性」を加味した漆工芸が出来ないか・・・・・『落書きシリーズ』は、そんな想いから生まれたものです。