人は昔から、他界にこの世の理想を描いてきた。 

(それは、極楽浄土であったり、天国であったり)。 

僕らは、いつ他界を失ってしまったんだろう・・・・・ 

こんなにも彼岸を忌諱するのは、何故なんだろう・・・・・ 

僕らは、やがて失った半身(彼岸)を正当に取り戻し、等身大の 

自然でふくよかな有り様を思い出す。

 

「今の厨子」を作るのは、いろいろな意味で難しいところがあります。一つは、現代社会では、あまり表に出したがらない「死」の問題があります。それから宗教の問題も大きい要素です。

そして、『死とは忌まわしいもの。だから、日常から隔絶したところへ収め封印する』、そんなイメージも払拭したいものです。 

厨子が、単に「亡くなった方の遺品や象徴を安置し収める器物」ではなく、僕らが生涯「居なくなってしまった」という事実を受け入れられないように、それはそれとして、分からないことは、分からないこととして、そっとしておき、ふとした日常の中で、亡き人と『語り合う』ことを《仲介をするもの》となることを僕は願っている。 

であるから、器物としては、日常に埋没してしまう方が理想だ。

仏壇然としているのではなく、出来ればお洒落で、普段はオブジェのように、現代の生活空間の中で、そっと息づいているような......そして、過去のいろいろな思い出に浸りたいときには、その扉を開け故人に語りかける......そんな厨子があったら素敵だと思っている。

                                            作者