解 説
僕は、文字や記号がとても好きです。同じ意味で楽譜(勿論、音符も含みます)を見ていると飽きません。とても美しいと感動することしきりです。

嘗て「外国語を読めるより楽譜を読める事の方が数段素晴らしい」と慎太郎が言っていたのを記憶していますが僕も同感です。

 このお重はそんな思いを一杯詰め込んだ、そして豪放磊落に落書きタッチで音符や速度記号・速度標語・旋律の高低と強弱記号、それから発想記号も自由に描き込んでいます。
正直このお重が売れるとは思いませんでした。でも「つい先日とても素晴らしいクラッシックのコンサートを鑑賞したばかり」とお話しして下さった、銀座の画商のYさんがこのお重を求めて下さったのは全く幸運でした。

ちょっと話題が逸れました。
何れにしても「遊び」がたくさん詰まった僕のお気に入りの一品です。(これは秘密だったのですが、この作品は都会で寂しく一人暮らしする独身者が、仕事から帰ってきてたった一人で食事をするときの食卓をシュチエーションとして描きつつ制作したものです (^^;) )。 
あまり美しい螺鈿用のアワビがもう安価に手に入らなくなってしまったご時世なので、思い切って現代化学の技術で生まれたフォログラフなるものを玄人の顰蹙を覚悟で使ってみました。
LOVE の文字が入っている部分は、鉛の象嵌です。

銀色の部分は、得意の錫の研きですが、そこに描かれている文様は、実はワルツ等の指揮棒の軌跡であります。(これってあり.......?ありだよね^^;)。
これは大分前、九州は福岡の陶芸家である岩田圭介さんに用立てて頂いた、鹿児島県は桜島の火山灰と漆を混ぜた特性の地の粉でハートのマチエールを付けたものです。勿論、銀色の部分は錫の研きです。
(岩田圭介さんのお兄さんが鹿児島県立窯業指導所にお勤めになっていなかったならば、この作品は生まれませんでした。この場を借りて御礼申し上げます。)
LUCKY という文字のちょうど反対側にbroken heart などと縁起でもない落書きをしてしまいました。その時は、LUCKY WORD ばかり選んでいては、ちょっと偽善的だよな〜.......なんて感じてしまい、つい筆が滑ってしまいました。
でも、ちゃんと Requiem (鎮魂歌)と言い訳を描いておきましたのであしからず。
これは現在使われている音符の原型となった中世の音符であります。(ある意味今の音符より美しいです)。
これも鉛の象嵌に描いた中世の音符です。実はその下部にあまりハッキリと見えませんが HAPPY と打刻してあるのですが............。
これが例の指揮棒の軌跡で「二拍子」にあたります。

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