恵比寿重






素材:身・・・檜(実際の升を細工したものです)  蓋・・・松

仕上げ:透きうるし塗り(溜め塗り)

size :w14×d14×h15(cm)




恵比寿彫刻部:錆仕上げ

文字部:錫粉蒔 「鯛・豊・福・大漁・幸・魚」

本体:内側及び角部布着せ 
コメント
三年以上、彫刻をしたまま放っておいた作品です。

大黒様や恵比寿様のようなキャラクターは、理屈抜きに、僕ら日本人の古層に横たわっている原始宗教に深く関わっています。

六世紀、日本に新しい宗教として仏教が伝来しました。それまであった土着の宗教は、仏教と同化し阿修羅などの守護神と並ぶキャラクターとして位置づけされ直されます。恵比寿・大黒も阿修羅のように悪魔・魔神として登場し、やがて改悛し善神となりました。僕は、その転倒が大好きです。それこそ酸いも甘いも嗅ぎ分けた、清濁併せ持つ存在の幅広さに憧れます。

仏教伝来より、ずっとずっと前から人々を支えた原始信仰であるアニミズムやトーテミズムは、新しい宗教が生まれた後からでも消えることなく、僕らの古層に沈殿して遺り続けています。僕は、そういった普段眠っているプリミティブな心の領域に降りていき、原無意識に辿り着きたいと願って大黒様や恵比寿様という姿を借りています。