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先日、2020年コロナが始まって以来ずっと視聴し続けている『一月万冊』のMC清水さんが、鬱が治り、ここ最近オシャレに気が向く余裕が出て来たという。お金持ちの彼は、ヴィトン他、有名ブランド品を身に着けていると嬉しそうに話す。彼が着ているセーターやトレーナー、そしてジャケットは、概ね周りの評判は今一つらしいが、僕は派手な柄の多い彼のチョイスは好きだ。

京都のブランドで、かつてのコムデギャルソンの様な襟のないカーディガン?ジャケット?も、渋くモノトーンでワビサビっぽくて中々イケていた。放映中、様々な欧州のブランドを立ち上げた創始者の多くが、派手な表の顔とは別に、LGBTであったり、人種差別だったりと、沢山のハラスメントを乗り越えて今日があることを熱く語っていた。そういった背景を持つブランドの創始者にリスペクトする無意識が手伝ってブランド品を応援しているとでも言いたげ。
 
京都ブランド ピース〇〇
 AIが描いたというセーターは、ちょっとミロを彷彿とさせるレベルの面白さもありコンテンポラリーなデザインだなぁと。ただ、これは貧乏人の僻みかも知れないが、僕ならもう一味自分の手を加えてお洒落するけどなぁと思った。ブランド品だけを身に纏って、それだけで終わってしまうのは、まるで、ヴィトンの縫いぐりみに収まって街を闊歩している様で、広告塔の様に見えやしないかと。あるいは、「お金持ち」という記号が歩いているという感じに。つまり、お洒落というのは、着こなしにその真髄があるのではと思ったりしている。

昔、品のいい山の手のご婦人に、ワイドショーのレポーターがインタビューしたところ「下町は粋、私たちは野暮だから」と品良く笑って仰っていた。そう、ブランド品を身につけられるのは、お金持ち。つまり、属性が山の手にある人々。なので、ぱっと見「お金持ち」が表に出てしまったら野暮。よく分かっておられる。そこは、裏地に凝って、表から見えないところに派手を隠し、ちらっとだけ見える様に着こなすのが粋。

AI制作セーター
この「粋」は、江戸幕府が、庶民や武士に派手は贅沢につながるので御法度、という規制の中で生まれた庶民の遊び心と知恵が背景にある。
 また、欧州におけるブランド品の持つ意味は、明確に階級を峻別する記号でもあるので、最下層にあるものが、ヴィトンを身につけることは先ずない。日本では、そういった階級社会が表向きない様に、皆が振る舞っているので、六畳一間のアパートに住むアルバイト生がヴィトンを身につけても誰も咎めない。実際は、如実に、厳然と階層はあるのだが…。なので、そういった日本の歴史や背景を組み込みながら着こなさないと、ブランド品をお洒落に見せることは難しい。

で、自分はどうかというと、ブランド品は、イッセイ・ミヤケとラコステのセーター位か。全て気に入っているけれども、ほぼほぼ頂き物。イッセイ・ミヤケのチヂミの様な生地の白いシャツ位だ。冬でないと身につけられない「NUNO」のストールも気に入っているけれど、これも頂き物で、現在の代表であるSさんから戴いたもの。
あらためて、自分の一番のお気に入りの服は、昔、表参道の古着屋で買った冬用の厚手のコートになる。ただ、真冬の極寒の時でないと暑くて着れないのが玉に瑕。当時の値段が、2,000円也。裏地の襟元に、「吉川」と刺繍があり、高島屋という昔の野暮ったいロゴも気に入っている。まあ、高島屋百貨店もブランドになるかなと。多分今買ったら20〜30万するんじゃないだろうか。

本当の金持ちならばブランド品を普段着で、さらっと着るんだろうが、僕は古着でないと肩がこる。根っからの貧乏人なのだろう。最近のお気に入りは、以前鹿児島で個展を開いと時、街に出て古着屋を見つけたときのもの。アメリカ製なので僕の体型にピッタリ。おまけに、オール¥380というのも助かる(やっぱり貧乏人か)。日本にはない柄が多いのも気に入った。その店舗の壁にディスプレイ用に飾られていたジャケットは、店の一押しだったと思うが、これが滅茶格好いい。二着とも買い占めた。

carhartt jacket.... 袖




あとで知ったのだけれども、このジャケット、アメリカの作業着の有名ブランドで carhartt というメーカー。二着ともシミや汚れが目立つキャンバス地。一着は、穴が空いているわ、袖口や裾がボロボロにほつれているは、ガム?が張り付いているは。おまけにそのガムを地面で擦ったのではといった程。大きさはちょうど良かったけれど、流石に汚過ぎて放っておき、もう一着の薄茶のものを気に入ってずっと着てきた。こちらはアメリカンクラブでの個展の際、ホールの受付のチーフに verry good! と親指を立てられた。ジーンズは、「gu」で、ブーツはGTホーキンスだったんだけどね。アメリカ製のブランドを着こなしていたところが気に入ってもらえたのかも。。

ところが最近アップサイクルなるものに目覚めて、昨春、薄手のデニムジャケットをパッチワークや刺し子でチューンナップしたのがとても気に入っている。実は大分前から息子にもらった古着(これもGAP等アメリカ製)が気に入っていて、袖口のほつれを刺繍糸でカラフルに修繕したりしていた。こういうのをダーニング(darning)といって、使い古して穴の空いた靴下や、虫の食ったセーターの穴を、お洒落に修繕して再生させる庶民の知恵から生まれたもの。



日本にも金継ぎといって、割れた茶碗をノリ漆で接着し、その割れ目を覆う様に金蒔絵を施す手法があるが、ダーニングはそこまでの価値転換はないけれども、やり方次第ではオリジナルより素敵に仕上がったりする。アップサイクルは、ダーニングを更にラジカルに進めて、ある意味オリジナルの持っていた風合いなどをパッチワークや一部ダーニングで全く新しい仕上がりに加飾する裁縫をいう。

その意味でアップサイクルは、21世紀の今日、環境への負荷を出来るだけ減らせる指向性の上に生まれたコンテンポラリーな営為になる。
 大量生産→大量消費→大量破棄の流れを逆手にとって、嘗ては捨てられていた古着を加飾し再生すること、そのものに新しい価値を見出そうとする試みがアップサイクルだと思う。恐らく30年前ドイツの若者達が、ゴミとして捨てられるはずのトラックの幌やシートベルトを使って鞄を作ったのが始まりではないか。
 
このアップサイクルだが、僕の住む足利では街を見渡しても余りアップサイクルでお洒落をした人に会ったことはない。これは、もっと本格的な都市空間でないと輝きを見せないものなのかも知れない。足利では、ホームレスと間違えられ、ただの貧しい人で終わってしまうアイテムかなと。

でも、ここに来てお洒落がしたくて堪らない。コロナで長く引きこもっていたことの反動だろう。でもコロナでお金に余裕もない。そうすると不思議に手持ちのアイテムに一手間掛けてバージョンアップしようといった衝動に駆られる。他の人は違うのだろうか。「一月万冊」の清水さんの様にIT会社の経営者だと、すんなり気に入ったブランド品を購入し、さらっと身につけるのかも知れないが、僕はお金持ちではないので、ここは、自分の強みでもある修繕好きを活かして、アップサイクルという再生術を使うのがお洒落かなと。

昨年暮れ、何かに疲れていたのだろう、あまりの痛み具合で放置しておいた carhartt のジャケットだが、一口に言って汚い💦 汚れも生地の痛み具合も酷く、袖口や裾はボロボロ。先ずはここから手掛けることに…。

袖口の痛みは特に酷く、ここを刺繍だけで細工するのは手間も掛かるし単調で面白くない。そこで、コンディションの悪い箇所には革と金具の組み合わせをトライ。大きくほつれた箇所には何色かのカラフルな刺繍糸を順番に使いチャーミングに。ただし、元来アメリカの野生味溢れるブランドのジャケットなので、素材の違いと、その組み合わせで攻めた方が無難だけれど余りにもワイルドになるのは年齢的にそぐわない。その塩梅は難しい。
   
  で、そもそも全体が汚いので、このキャンバスジャケットそのものの印象を根本的に上げないことには只のボロでしかない。
 そこで真鍮プレートにドリルの刃で落書きをし、表面をコーティングして carahartt のロゴの上に小さなボルト・ナットで付けてみた。金色の効果は絶大だ。

途中、あまりにも汚れていたので、洗剤を溶かした湯船に二日間漬けておいたら真っ黒の汚れ。快晴の日に干して乾いたら、まるで戦場から帰還した兵士の風呂上がりの様にさっぱりとした。ところが、さっぱりとしたジャケットは、汚れの持つ重さがとれたからか、何かインパクトがない。そこで車のシートカバーの端切れに銀のスプレーを塗布。そのあとに溶剤を使って一部銀を落としで全体的に古びを加えビス止め。まだ未だ手を加えたいところだが切りがないので打ち止め。
 
 



 
  他にも、アップサイクルと並んで一部チューンナップもある。黒いトラッキングブーツの金具をステンから渋いアンティーク調の金具に付け替え。これで完璧。

お洒落って、基本コーディネートだと思う。それは、ブランド品を身につける時も同じで、頭の先から爪先までブランド品で装うのはなんだかなぁという感じ。その点、アップサイクルした服は、とてもリラックスして着こなせるから不思議だ。元々汚れているので粗末に扱っても構わないし、返って汚したいくらい。これでもかと力んだお洒落ではないので肩にも力は入らず楽にお洒落しているところがいいんだろうなぁ…と。
 
 





 
   ということで、自分の場合、アップサイクルという名の謂わばチューンナップは、多分コロナ禍があってのことだと思う。無意識がそうさせている様に思えてならない。まぁ鎮魂かなと。。きっと、そうでもしないと先の全く見えない今をバランスをとって生きるのが難しいのだろう。

安冨教授曰く「人生計画など立てても、その通りには絶対ならないので無駄だ」と。おまけに「選択ということも不可能だ」と。コロナもウクライナ危機も誰が予想しただろうか。僕自身、自分のライフイメージだと、六十歳を過ぎて毎日ゆったりと仕事をこなしているはずだった。現実は、全くそうはなっていない。この先も良い状況にはなりそうにない。そんな現実の中で、将来不安なんかと直対応などしたら怪しくなる。ここは、手を動かしてアップサイクルでもしてやり過ごすしかない。

いい時期にアップサイクルに出会えて本当によかった。

久し振りに『Walz for Debby』を聴きながら更新してま~す
🎵
 
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