この時期になると椀とかお重を手掛けたくなる。四~五年眠らせてある新しいデザインの椀に殷墟文字を入れることにした。
一年近く『源氏物語』の原文を書写してきたこともあって「書く」という営為に以前ほど敷居が高くなくなった。今更だが、生前、吉本隆明さんが繰り返して言っていた「手で書くということが表現の基本だ」ということがよく分かる。ただ、いつもの様に書く段になると、既に知っている文字も再度辞書や書籍でひくし自分の書き残したメモにも目を通す。
今回は「食」に関する文字を中心に、『塩・胡椒・糖・醤』や『舌鼓・満腹』etc 四文字セットで書き込むことにした。
いろいろ物色していると白川静さんが「狂」という文字の背景に関して触れている箇所があった。「狂」に関して論述するにあたって、氏はミシェル・フーコーの『狂気の歴史』にも目を通していたというところに釘付けになった....
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