源氏物語原文書き出し
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  『 いづれ乃御時にか女御更衣あまたさぶらひたまひけるなかに いとやむごとなき際きわにはあらぬが すぐれて時めきたまふありけり はじめより我はと思ひ上がりたまへる御方がた めざましきものにおとしめ嫉みたまふ 同じほど それより 下臈げろうの更衣たちは ましてやすからず 朝夕の宮仕へにつけても 人の心をのみ動かし 恨みを負ふ積もりにや』........


以前にも触れましたが、吉本さんの『心的現象論序説』に続いて、今芸術新潮『ひらがなの謎を解く』の「古今和歌集」の筆写を続けている。コロナ禍の中にあって、手を動かし古典を筆写するということは、心の安定というか健康に大きく寄与していると思う。

同時に、「ひらがな(女手)」の原典ともいえるので、古文書の解読にも大いに役立ち、お陰で、但馬の古文書講座の先輩(御年90歳?)に戴いた『スペイン風邪(民部省御達し写し)』などスラスラ・サクサク読めてしまう(感謝)🎵
 
  とはいうものの、くずし字辞典をはじめ、古文書アプリ、ネットのデーターベース(ROIS-DS人文学オープンデータ共同利用センター)、その他をフル活用して謎解きゲーム?を楽しんでいる。

世の中ゴールデンウイークとやらで、地方の観光地は、都心から逃げ出した観光客で三密状態とか。。僕は、岡山県の『中華料理 はすのみ』さんでお使い頂いているコースターの修繕も終え、この連休は、古文書の解読に明け暮れようと決めた。

一応、足利歴史探求会の会員として『田崎早雲日誌』のテキストとも睨めっこ(字が汚ねえ;;)。「心」の古字をネット検索していたところ、冒頭の『源氏物語』の文例に行きついた。早雲先生とは雲泥の差で(日誌なので仕方ないが...)、まるで藤原行成の様に流麗で美しい。うっとり

藤原行成筆
今日で連休も終わり、予想通り観光地は馬鹿混み状態の様子。そりゃそうだ、首都圏だけ緊急事態宣言を敢行すれば、皆さんコロナを地方にしっかり運んでくれる。2週間後どういう事になっているのか...... もう笑うしかない。

人類は、おおよそ15000~10000年前から定住し始めた。人口密度が低かったとは言え、人は一年も二年も対面でのコミュニケーションを避けるように出来てはいない。だから、ロックコンサートや伊勢参りに昨年の75倍の人が押し寄せるって、ある意味まともだと思う。仕方がない。オリンピックも止められないとしたら、ここはもう、ワクチンでの抗体を作るより、感染で作る方を人々は選んだと腹を括るより他ない。

僕のGWは、人生で一番充実していたと言ってもいい位で、『源氏物語原文』や『古今和歌集』、そして古文書『異国船渡来』他を筆写も兼ね読み耽っていた。

《日野切千載集》...........藤原俊成筆
上の文書は、平安時代(12世紀)の《日野切千載集》で、筆者は、藤原俊成。

芸術新潮の解説者・石川九楊氏によると、史上七番目の勅撰和歌集(天皇の命で編纂された歌集)である《千載集》に、選者として藤原俊成が登場し、この奇怪な癖字とされてきた「突き」や「返し」の連続である「日野切」様式が表出されたということ。

石川氏によると、この藤原俊成の筆遣いというか、表現は、没我というか匿名性として続けられてきた「ひらがな」が、歴史上初めて実名の存在として自らをあらわにした革命的な書だという。確かに、近代的なアート観として見ると非常に個性的だ。好き嫌い、良い悪いは別にして、一度目にしたら二度と忘れない表現だと思う。

氏は続ける...... (「突き」や「返し」の連続で尖がるわけですが)、これは単に形が尖がるだけではなく、グッと紙の奥、向こう側に力が加わったということでもある。つまり向こう側を知り、そのことによって自分の姿をも認識し、そして次に進もうとする書がここにはある。
 
藤原行成筆
俊成の個性的な表現が、その後継承されることなく絶えてしまったことの背景には、いかにも日本的な空気感が漂う。つまり、周りの空気を読んで、余り出過ぎた振る舞いは”野暮”といった価値観だ。

なかなか石川氏の主旨を伝えるのは難しいのだが...... 。

僕は、車が好きなので、そのデザインで例えると石川氏に「ぞくっとする」と言わしめた俊成の表現は、フランス車で、歴史に残る名車シトロエン DSにあたるかなと。後にも先にも、こういった「奇怪な癖字」とも言えるデザインは、本国フランスでも出ていない。僕自身は、歴史上最も美しい車だと思っている。

シトロエン DS
一方で、藤原行成の表現はというと、それは、やはり英国車になる。気品があって洒脱、そして、奇を衒うところもなくバランスが取れている。

ジャガーマークⅡ
多分乗っていてわくわくするのは シトロエン DS 。そして、何処までもドライビングを続けたくなるのが英国車(ジャガーマークⅡ)では。。実際、英国車ローバーミニでのドライビングは最高だったし、整備も手を掛ければ掛けるほどコンディションが良くなってリペア好きの自分にピッタリ。ただ雪国ではヒーターが効かず、但馬の山奥で吹雪にあい、フロントガラスには雪が凍りつくし、ほんと死ぬかと思った;;
 
 この例え、お分かり頂けたでしょうか(男性限定ですね;;)

そう、源氏物語原文でした。この「源氏物語」、欧州で例えれば「ギリシャ神話」とかに匹敵する様な、「万葉集」と並んで日本文学の還るところとも言える。もちろん日本にも神話はあった。ただ、古事記や日本書紀は、為政者に都合よく編纂された物語の色彩が濃いので、「還るべきところ」には成り得ない。

今回偶然探し当てた『源氏物語原文』は、歴史上繰り返して経典のように参照され続けている教本のような存在。石原氏が指摘しているように「藤原定家が、古典(源氏物語)を写したのは、美術的な鑑賞に供するためではなく、拠るべきテキストを確定するためだった」。

古文書を読み解く上で一番の障害は、事実上フォントが無限にあること。印刷技術がなかったので、「フォント」という概念そのものが生まれようがなかったので仕方がないのだが。
 
『源氏物語』......... 藤原定家筆
 
手本が美しいと、解読もストレスがなく、苦行から快楽へと替わる。ネットからダウンロードできる「源氏物語原文」の筆者が誰なのかは未だ掴めていないが、教本は重要だ。

下↓の書字は.........
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 これで「おふ」と読みます。ひらがなが得意とする「連筆」「掛け字」になります。
 
 これは、読めますね 「たまひけれど」。無茶美しい!
 
これで「みらしをこの...」。濃淡、太細、大小と流れるような筆遣い。特に、「を」がユニークで美しい
....... と、高校時代、生まれて初めて漢文で0点をとり、現代国語も古文も大っ嫌いだった僕が、今では毎日「源氏物語原文」を筆写しているという不思議。

ということで、原文の解釈と筆写は、あの世に行く前に済ませることは、到底不可能なので、楽しみながら味わい尽くしていこうと思う今日この頃です。

では、では。