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もう、やってらんねぇな~...... と、映画を観ることにした。

政治も経済も社会も、そして、大手マスコミもほんとクソなので videonews.com の映画紹介を観返し「ロクでもない世界の現実を映画はどう描いているか(2017年)」と「救いようのないこの世界に映画が一筋の光明を見出し始めたわけ(2020年)」の中からよさそうなのを選んで観ることにした。

経験上、映画評論家を自称する宮台真司の推す作品は、「そうでもねぇかなぁ」が多かったので、今回は相方の神保哲生さんの推すものにややシフトしてみた。
『サーミの血』......... 北欧スウェーデン、知られざる迫害の歴史―
幻想的で美しい自然の大地ラップランドに、サーミの歌ヨイクが響く


素晴らしい!
『サーミの血』に関しては、宮台さんも、あちこちで推しているので今回は納得。
僕自身が、普通とは言えない職業柄、大方「コモンセンスから外れたひと」とみられていることは十分承知しているのと、物心ついた頃からずっと「周り」と自分の居場所に何処か<異和>を感じてきたので、今回のテーマである少数民族や所謂差別されるマイノリティー(=ハンディーを持たされた人々)に対しては、すっと自分と重なってしまう。

大分前邦画『GO』と「n個の性」でも触れたが、僕らは無限の主従関係、あるいは権力関係をもつ。立場や環境が変われば、その関係性も反転するし、優劣も反転する。たまたま自分の属性が「優」にあったとしても次の瞬間には「劣」な感情に支配されることも多い。その意味で「n個の性」は、固定したものではなく常に流動的で様々な要因で、それこそn 通りに変異する。
どうせ世の中がクソならば、ここは徹底してクソを描いた映画を観よう!、と5金で「絶望の質が変わった」とされる『よこがお』で女優・筒井真理子を知り彼女の履歴から『淵に立つ』を続いて観た。安冨東大教授じゃないが「世の中は複雑だ」。愛も屈折するし、憎しみも屈折する。

そういえば、小学校の下校時、好きな娘に石を投げる級友に付き合って、一緒に投げていたら翌日ホームルームでエラく担任に叱られた記憶がある。「好き」≠「優しくする」⇒「好き」=「意地悪する」....。

当時、同じ様に解せないことがあった。生涯を通じて、あれほどひとを好きになったことがないと想える娘がいた。告ったことはなかったが、その娘とは相思相愛の仲だった様に思う。同級生で恋敵がいてとてもハンサムな奴だった。けれども気の毒なことに、小さい頃に太ももの付け根に大火傷を負ったらしくビッコを引いていた。それでもスポーツは万能で、野球もドッチボールも僕らと同じように上手かった。体育の駆けっこも、僕らと同じように走った。

邦画『よこがお』
でもというか、それ故、無茶苦茶頑固で意地っ張り。何か下らないことで意地を張って仲間を困らせていたので横っ面を思いっきり張り倒したことがあった。その場に親友もいたが、一瞬のことだったので唖然として言葉もなかった。直ぐに夏休みに入って、そんなことがあったこともすっかり忘れていたある日、その彼から暑中見舞いのハガキが届いた。

そこには下手くそなドナルドダックが描かれていて「あずま君に教えてもらったドナルドです。ありがとう!」と添え書きがあった。いつ教えたかも覚えていなかった僕は、??だったが、気持ちのいい文面からは素直な彼の気持ちが伝わってきたので首を傾げたあと、そのことは忘れた。

それからどの位経っただろうか..... 。あっ彼は逆差別を受けていたんだと気付いた。意地っ張りの彼を差別なく本気で諫める奴は僕以外居なかった。たぶんクラスメートは、彼が足に障害を持った事故の経緯を知っていたのかもしれない。その彼が、僕の好きだった娘から貰ったと、ボン・ナイフを僕に見せびらかしたことがあって悔しかったが、そのことも事故があったことへの感情からだと大分経ってから承知した。
 
邦画『淵に立つ』
 
  普段、TVはもちろん、映画やビデオなどほとんど観ない僕なので、浅野忠信くらいしか俳優の名は知らなかったが、皆演技が上手いというか役者だなぁと感心。そして、世の中は複雑だ。恐らく、僕らの実生活は眩暈がするほど複雑極まりないのだろう。

5金スぺシアルで勧める洋画は、『サミーの血』以外に『オーロラの彼方へ』、『リチャード・ジュエル』、『ブレインストーム』、『アバウト・タイム』、『リメインダー』、そして、韓国映画『パラサイト 半地下の家族』。この連休中、すべて「Amazon Prime Video」で視聴し十分楽しめた(出費¥1500程)。

邦画は、深田晃司監督のものだけだったので「日本映画は、これこれだ」とは言えないので、『よこがお』と『淵に立つ』に関してのみの感想は、不可解さや不条理、そして、複雑さを描くとしたら、世界の在り様を、どこまでも徹底して論理的に詰め、そこからどうしても零れる事象を、不意や掴みきれない複雑さとして表現する手法の方が、もっと効果的に非ロジカルな世界を際立たせることが出来たのではないかと感じた。つまり、不可解さを不可解さとして描いてしまうと不可解でなくなってしまうという矛盾に陥るということ。

登場人物の出自や環境の設定は、そのままステレオタイプな人物像を喚起させてしまうが、それでも人は、カミュの『異邦人』の様に唐突に人を殺したりはしないし出来ない。
 
   
  不条理と言えば思い出される出来事があって、僕らが小学生の頃に起きた「吉展ちゃん誘拐事件」の担当刑事が刑事を辞めるきっかけが、2000年初頭から起きる事件の原因と結果が辿れず、これでは犯人を捕まえる自信がないと感じたとのこと。

昭和の犯罪は、生まれや育ちで大方察しがつき、必然性も認められたのだろう。
 
当時、吉本隆明氏が述べていたことに「資本主義が高次化して一億総中流化となると、無意識が均質化して、ひとびとが”病む”ことの差異が殆ど無くなり、その深さも浅いので重度に病むということがなくなるのではないか、というか病んでいるのは社会そのもの」と。今では、日本の格差社会は広がり、一億総劣化とは言えても中流とはかけ離れてしまったが。。

その意味で、犯罪が起きる必然や熱意?も曖昧でふにゃふにゃ。ひとびとの負のエネルギーも正のエネルギーも低くなっている。それは、犯罪白書に目を通せば一目瞭然。殺人事件など激減している(事件報道の繰り返しで体感治安は悪化しているが)。
 
   
そして、今回観た映画で一番の秀作といえば(宮台真司も同じことを言っていたが)韓国映画『パラサイト 半地下の家族』になる。いろいろな意味での「韓国の今」を垣間見ることができた。

就職難や格差のリアリティーが、日本の半分以下の人口であることによって、僕ら日本人よりもはるかにシビアに感じられているし共有されている。もう笑って流すしかない程の深い絶望なのだ。それ故、映画の筋書きもコメディタッチになっている。その方がリアルなのだ。

人口5000万とするとマーケットの規模は小さすぎる。従って、初めから輸出を前提に世界をマーケットにして戦略を立てるので、 電子機器などの主要産業や、Kポップを始め、映画などのサブカルも国の外が前提になって制作している。相当日本は溝を開けられたと実感した。
 
   
  日本もクソだけどアメリカも相当クソだ。どうしようもない程クソだけれども、そんな中生きていかなければならないのも事実。
 考えてみれば何時クソじゃなかったのか。。安倍・菅が劣化を加速させたことには違いないけれども、宮台真司が繰り返すように、劣化は一気に進んだほうが弱者の痛みが少なくて済むかも知れない。

久し振りの映画は、気分転換にもなり新しい発見もあって収穫は大きかった。

それにしても、唯のカウボーイ役の記憶しかなかった Clint Eastwood の監督作品は、デモクラシーやナショナリズム、そしてエセリベラリストの矛盾を鋭く突いてきて説得力がある。御年91歳。勇気をもらえました。

映画って素晴らしい!
 
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