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久方ぶりの個展だからでしょう、気合入ってます!

今回の厨子展のテーマは、素直に『鎌倉彫』。
 作家になろうと決めた頃、こんなベタなタイトルはダサくて絶対付けなかったと思う。最も、当時はミニマルが本筋で、鎌倉彫のような過装飾な表現は趣味の悪い権化のような代物。この世界に人って40年も経つと変わるものなのですねぇ。

気合は入っていても肩の力は抜けていて極自然体です。

↑ 上の画像は、僕の入門した鎌倉彫宗家博古堂に伝わる小刀の研ぎ方で後藤彫独特のもの。小刀で曲線を彫る場合に、弧を描くように研ぐことで、ガタついてタタラを踏まないように出来る。この研ぎ方は簡単ではなく、入門者の中には生涯出来ない者もいた程難しいとされた。
一点を軸にして放射状に砥石に当たっていなければ弧を描くようには研げない。僕は得意でした。
 来る日も来る日も研ぎと線彫(3ミリ幅の平行線を引いた板にVの字の溝を真っ直ぐ彫る修練)に明け暮れて、今考えると何とも贅沢で幸福な日々で博古堂に感謝しています。
 
光雲製小刀
そう、この研ぎに関しては面白い逸話がありまして、オヤジ(=社長のこと)が入門間もない僕の横に来て研ぎに関しての講釈を垂れた時事件は起きました。。
 オヤジの説は、刃先から始まって末端までの曲線は均等なカーブを描く旨の解釈。僕は、それでは地金の端から放射線状の線は出ず、弧を描く曲線の中心点になり刃先から遠く離れるはずだと食い下がり図示してみせました。瞬時にオヤジは「君は理屈っぽいなぁ。いいかこうするんだ」とメモ用紙の上で小刀を振ったところ勢い余ってメモ用紙をかすめスライスしてしまいました。そうしたら、何と薄紙を剥がす様に何ミクロンの厚みの紙を残してひらひらっと紙片が宙を舞ったのです。剣の達人に出くわしたかのように、オヤジは黙ってその場を去ったのは言うまでもありません。やった ♪

上の画像は、後日「君、これ研いでみろ」とオヤジから頂いた高村光雲御用達の上野光雲製小刀です。この小刀、ただの小刀ではありません。多分玉鋼だと思います。無茶苦茶切れ味いいです。
 
恐らく相当期待して下さっていたのでしょう、僕も諸先輩方を見習って彫塑を学びたいと思いオヤジにその旨を伝えました。残念ながら、その当時は工房内で彫塑を手掛け天下の日展を目指す機運はなくなっていました。というのも、入選を果たした先輩方(彫刻部全員)が、その後鎌倉彫にそのリソースを活かす気配が感じられないとオヤジが踏んだのでしょう。その代りに上の↑デスマスクを持参し「これで自習し、ある程度の成果が出たら鎌倉市在住の日展の重鎮に紹介する」と伝えられました。

結局、僕はその後現代工芸に耽溺し抽象の世界にしか興味を持てなかったので、このデスマスクを活かすことはありませんでした。このことは今でもずっと引きずっています。
上の↑画像は、僕がこの世界に入った時に手に入れた『鎌倉彫』(後藤俊太郎著)に掲載されていた碁器で、明治に入り廃仏毀釈で当時の工人が失職し将来を案じた時命運を掛けパリの万博に出品し賞をとったものです。僕は、この碁器が鎌倉彫の最高傑作だと信じて疑いません。今回の厨子展では、オマージュを捧げる意味で、この力作に挑戦してみました。
ちょっとフリーズしていて申し訳ない。

現時点で余りにも彫りの手間が掛るので、個展に出揃う作品が足りず会期順延としました。

彫りの作業は、この上なく楽しく時間を忘れるほどですが、その分途轍もなく手間も時間も掛かります。時間がいくらあっても足りません。こういった仕事をする輩は僕くらいしかいないでしょう。でも、誰かがやらなければこういった表現が消えてゆくだけです。それは偲びなく且残念なことです。別段、倫理的に正義を謳うつもりもありませんが、ここは自分の心の声を聴き損得を超えたところで仕事をしたいと腹を括っています。

 勿論、厨子屋さんや会津本社、そして影に日向にサポート頂いている山田節子さんにご迷惑をお掛けすることは十分承知していますが、何分こういったキャラなのでご理解頂ければと願っています。
 
   
少し時間が取れたので、地元金浦の地域振興を願って広報を兼ねたHPの雛形を構築し、順次区長に伝授する毎日です。

 ここ近畿但馬は、漸く梅雨に入りました。個展の出品数も増えることになりましたので随時ご紹介できればと思います。

では、では。
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