乾漆凸型..........石膏とセメント
急ぎの仕事を漸く済ませ、やっと乾漆を手掛けられる余裕が出来た(まっ、これも急ぎなのですが;;)


工芸の中でも最も分業化が進んでいる漆工芸なのですが、そんな中で乾漆は、器の形づくりから始まって仕上げまで通しで手を掛けられる珍しい作業になる。なのでとても充実感がある。

但し・・・・思いの外手間が掛かってしまうので生産性は低い。つまり儲からない。

いつもの様にiPadで videonews.com 「アベノミクスが露わにした日本経済の病理」を聴きながらの作業をしています。「政府は、生産性の低い従来型の既得権益をサポートすることなく、新しい未来のある業態に成長戦略として予算配分すべきである・・・・」などと聞くと、僕らの様な前近代的な生産性の低い伝統工芸に関わることは、時代に逆行していて良くないことをしているような心持になる。
 
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シリコン凹型と石膏凸型
僕は、何か表現することというか、ものを作ることがしたくてたまたまこの世界に入ったのですが、38年も続けていると、いくら生産性が低くて儲からないといっても、これはもう運命の様なものとしてこの仕事を受け入れている。時々陶芸だったら、もう少し楽が出来たかな~と考えたりしますが、今更転業は考えられないので、ここはもう腹を括って漆工芸を極めてやろうと・・・・・そこまで肩に力が入ってはいませんが、この縁を大切にしてやっていこうと思って楽しみながら作業しています。



その生産性の低い乾漆ですが、先ず凸型を発泡スチロールを削りだして成型するところから始まり、次にその凸型のクローンを作るため凹型を作る。以前は一品制作だったので凸型のみを作って済ませていたが、今は複数の制作が必要となったので凹型もたくさん必要になり、それにつれて完成度も要求されるようになってきました。
 
凹型は、乾漆の制作と同じように布をシリコンと交互に貼り重ね強度を付けながら成型します。

凸型の素材は、コンクリートやモルタルといろいろ試しましたが、結局石膏が一番使い勝手が良いです。というのも石膏は硬化したあと微調整のための削り出しが可能なので、カッターや小刀で微妙な木地調整が出来るところが便利です。


コンクリだと堅牢なところはいいのですが、微調整がヤスリでないと出来ないのでちょっと手間が掛り過ぎます。そして微妙なラインが出ません。


作業中は、手間が掛って儲からん!などとは考えることなく、夢中で手を動かしていますが、仕事の内容は前近代的なので100年以上も前の生産様式になります。それでも続けてきたのは、多分「古い」ということにシンパシーを感じてしまうのだと思います。先日も、いつもの様に「タモリ倶楽部」を楽しんでいたのですが、合間に入るJR東海のCMに出てくる新薬師寺の十二神将の映像を観ただけで涙が出そうになります。自分でも、その訳が分かりません。
 
そう仏像で思い出したのですが、根強い人気がある奈良興福寺の「阿修羅像」ですが、実は乾漆で出来ています。

昔は、火災が多かったため大事な仏像を火災から逃れるため、重たい木造ではなく、張りぼての様に中が空洞で軽い乾漆で作ったこともあったのですが、何せ手間が掛って高くつくので、結局広く普及はしませんでした。

それと、これは僕個人の感想ですが、木材の様なものを削り出して、ある形を成型する作業の方が、彫塑の様に粘土を足していく作業より楽しい感じがします。まっ、これは好みなので断定はできませんが・・・・。

日本人は、木に親しんでいるので木造の方が合っている・・・・と言いたいところですが、十二神将も阿修羅像も云わば彫塑ですので、削り出して(-)作る訳ではなく、基本粘土を足して(+)仕上げて行く作業です(乾漆の仏像)。なので僕らの先輩は、木彫にしろ彫塑にしろ彫刻そのものが優れていたといえます。
今日は、ここ金浦地区の夏祭でした。一年はあっという間です。ご近所の皆さんと生ビールを飲みながら談笑していると、公民館(祭りの広場)の駐車場で子供たちが楽しそうにボールと戯れています。もうここは黙っていられません。脚が疼いて「2対1やろう!」とけしかけボール取りとキープのゲームを始めちゃいました♪

酔っぱらってサンダル履きとはいえ、先ず小学校の四五年生にはボール取られません。実は、昨日床屋の帰り(この辺は朝8時から開店です;;)小学校の前を通るとカラーコーンを並べて何やら練習らしきものが・・・・・・。Uターンして暫しその風景を眺めていたら時間を忘れてしまい最後の練習試合まで観戦しちゃいました;;祭りでボールを蹴っていたのは、そこのチームの子です。ここ山東地区は滅茶サッカー強いです。指導者が熱心なのでしょう。僕もゲームに入って練習をしたかったのですが、流石にサンダル履きではね。。
 今年のお盆は、天候が不順で、雷やら豪雨であまり夏らしくない陽気でした。夏のイメージも大分変って来て台風一過のあとの快晴もなければ、にわか雨といった感じでもありません。暑い夏が大好きな僕としては、いまひとつ腑に落ちないもやっとした感じでいます。



さて乾漆ですが、僕の場合、今のところそのフォルムはモダンでもなければ、ポストモダンでもなく、その軸足は遥か昔の先史に行って仕舞います。

デザインとかフォルムは、一番矛盾のない形で表すのが望ましいのですが、それはあくまでも同時代性のある素材を使う場合で、僕らの様に前近代の漆という素材を使う場合、そう簡単ではない。今と言う時代をどう規定するかは、大分後になってみないと分からないので、その今と言う時代に、古い素材を使って「今」を表現するのは、相当内面で熟成発酵させる時間を置かないと頓珍漢なものが出来上がってしまう。
 
修業当時、「迷ったら個展へ帰れ」とオヤジ(入門した博古堂の社長)によく言われました。この手法は、ある意味普遍的で、尊敬する俵屋宗達なども軸足を安土桃山文化に置いたし、かのピカソもアフリカ美術からインスピレーションを受けていた。マチスなどは、エーゲ海美術のキクラディス文明に影響を受けていたりする。作り手にとって、”今”がどういった時代なのかは渦中にいるのでよく分からない。

同時代的なのもを作ろうとすればするだけ、”その時代’の外に一旦出てみることが必要になる。そこから自分の立ち位置を確かめて出直すというか、基準点の様な場所を見つけて、そこに腰を据えて作品を練り上げて行くということで何かが出来上がってゆく気がする。その基準点を何処にするかが、作り手の個性ということになるのかも知れません。

キクラディス
乾漆のように、自由度の高いフォルムを作ることが可能な場合、僕は{乾漆}でなければ作れない”形”を選ぶ。どうせ手間がかけるので、椀等の様な左右対称な形は避けたい。なので先史の器にあるような鼎型(三本足)に目が行って仕舞い、それを”今”に翻訳しなおそうとしているように思う。やっている本人は、至ってコンテンポラリーなものを作っているような気でいる。決して先史を制作しているつもりはない。その点は、根拠のない自信があります。それは、どう頑張っても僕らが先史の人間が感じていたであろうものへの感受性が同じであろうはずがないからです。



先史に思いを馳せて、感性を研ぎ澄ませ、イマジネーションを出来得る限り先史の人々に近付けようとするくらいが精々です。でも、そうすることによってイメージは時代を超え出て行こうとします。そこから新しい何かが始まるような気がします。
 
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 今日は久し振りに暑かったです。夏なので、こういった天候の方が僕は好きです。駐車場で日光を避けながら、大作の額縁を作っていました。外気は33℃で去年の今頃より低いようです。去年は37℃位の駐車場で、その屋根の修繕や Mushikui Zushi の制作をしていましたので今年の暑さは身に堪えません。
 
木を削るのは好きですね~。削っているときの木の香りが好いのでしょうか、それとも「削る」という作業そのものが気持ちいいのでしょうか。。両方ですね。時間を忘れて没頭してしまいます。


盆も過ぎ、時の経つのは早いですね。

立秋も過ぎ季節は秋の準備でしょうか。今年は冷夏だそうで、夏好きの僕としては何だか損をしたような心持です。でも、もうちょっとだけ夏が残っている様なので、今の内体力も付けておきたいところです。


新しい乾漆も制作したいのですが、先ずはオーダーを仕上げてからになりますので、暫くは出来上がった凸型に布を着せて漆を塗り重ねる作業の連続になります。


ということで、何となく忙しく毎日が過ぎて行きます。東京から遠く離れてしまうと余計に東博に行ってみたくなります。ここ兵庫にも博物館はあるので、新たな発見を期待して出掛けてみたいと思います。


では、後日報告まで。

お元気で。
 
by kurokawa