稔りの秋に
 
常滑レポート index
10/24  稔りの秋に
バベルの塔の物語 
若者たちと
蝉時雨聞きながら
 行く末の記
過剰なるものども
 梅雨入り直後
笛を吹いてはならぬ 
 晴鳶堂の記
 桜咲く
 若者三人
忘我に導かれる事 
立春 
一区切りの正月   




2005~2011  常滑レポート index
夏の間ひっそりと地中に身を潜めていたラッキョウが秋彼岸のころから葉を伸ばし始め10月ともなれば花芽を出して蕾を付け始める。草ばかりの畑に見えて、実は秋から春にかけての楽しみが仕込んであるのだった。

あちらこちらに耕作放棄された畑があって、そこの雑草君たちは、毎年どこよりも大きく成長している。肥料や消毒などまったく無用なのだ。そして、多くの生物は雑草と同じようにこの現実の中で生きている。
 
   
   
一人人間だけが肥料をやり消毒しないと育たない野菜たちがないと生きていけないと思いこんでいる生き物なのであった。新石器革命と呼ばれる出来事は単に石器の製法が打製から磨製に変わったという現象を指すのではない。

そこでは農耕がはじまり、牧畜がおこなわれるようになったのである。植物は静的な生物なのであまりリアルに感じないのだが牧畜のように多数の動物を管理する行いには、去勢という生命のコントロール行為が求められる。

野生の動物など群れで管理することは不可能なのだから。そして、同じ行為が植物に施されて野菜という奇形的な存在が生まれることになる。でも、一度その味に馴染んでしまうと野生のあくの強さには戻れないのであった。
 
そこに行くと不思議なのは魚たちだ。いまだ養殖魚が天然物の味を超えたという話を聞かない。さすがに豊饒の海は人類の手の及ぶ域ではないのだろうか。

秋になると夏に生まれた稚魚も成長して冬越しのために旺盛な食欲を発揮する。伊勢湾のような場所は巨大なるインキュベーターなので、黒鯛や鱸の一年生が秋にはよく釣れる。
昨日は外道でワタリ蟹が2匹も釣れた。

この蟹の肉はなんとも上品な味わいで絹織物の感じとでも言おうか。ズワイや松葉もそれなりに美味しいけれど、やっぱり蟹の味としてはワタリに尽きると言いたい。そして、その色合いの美しさのも心魅かれる。
 
 
知らぬ間に還暦も近くなり、海や畑で時を過ごすことの悦びを満喫できる境遇に上出来だと言うべきなのだろう。そろそろ学位論文も書き始めよう。30年も続けてきたテーマなんだから、それなりの形にしてやらねばと思うのだった。
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