大まかな流れ  
常滑レポート index
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2005~2010 常滑レポート index
16世紀後半の戦国から安土桃山へと移りかわるころに侘び茶の美意識が確立した。それまでの唐物を崇拝していた室町時代の流行は、大きく様変わりして高麗茶碗や国焼きを中国製品より上等の美として評価する流れだ。


高麗茶碗も韓半島では雑器として量産されていたものというのが通説。日本の茶人が陶業地にでかけてオーダーしたという説もあり、それなりに説得力をもつものの、かの地では無視された美の形である。
   
東美濃の地では黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部といった従来にない様式の茶陶が次々とあらわれ、唐津や萩、上野・高取といった産地も形成される。そして、楽茶碗だ。


それが、江戸幕府が開かれ治安が良くなるとともに琳派に連なる華麗な京焼き。乾山・仁清の時代となる。鍋島では大名の贈答品として華麗な磁器が生み出され、有田では柿右衛門様式、そして古九谷様式というか、色絵の時代となる。


大名の経済不振とともに下級武士や文人たちの趣味的心をとらえたのが池大雅や蕪村たち文人画の面々だ。そして、かれらの南画への憧れは煎茶とつながって、あたらな陶芸の地平を開く。青木木米を主導者としよう。
 
常滑市民俗資料館




ぺりー船隊の要求に屈し、幕末動乱を経て明治新政府が樹立される。そこから、外貨を蓄える必要が生じ、生糸とともに陶磁器も輸出品目として数えられるようになる。東インド会社が扱った輸出品の伝統をもつ有田。


有田と並ぶ磁器産地の瀬戸などがヨーロッパの万国博覧会にこぞって出品し高い評価をえて、かの地にアール・ヌーボーを生み出すきっかけを作ったりする。そして、その流行が日本の制作地にもまた影響する。オールド・ノリタケを見よ。


陶芸の方でも板谷波山や冨本憲吉といったスーパースターが登場するが、彼等の作品は西洋世界でも等しく評価されるべきものとしてある。勿論、明治の洋画家がけっこうな水墨画を残しているように、この時期の陶芸家は中国の様式から国焼きの茶陶まで手広く手がけてはいる。
日清・日露の戦役でかつての中華の花が枯れて見えてしまうという時代性も東洋的なものに対する否定的な流れがあったように見受けられる。そして、第1次世界大戦の参戦となる。西欧列強と同格の国という自意識が芽生える。


白樺派の時代だ。その流れのなかに柳宗悦がいた。柳は西洋の産業革命が波及し大量に生み出される粗製品を嫌い、手仕事の美にあふれるユートピアを復活させんと動き出した。
西洋社会においてはウィリアム・モーリスがアーツ&クラフツのムーヴメントを創り、やがて挫折している。


第1次世界大戦後のドイツでは、ワイマール体制がしかれ、バウハウスの先端的な造形が確立しつつあった。機能美を優先した北欧クラフトの造形もここらへんが震源地となるはずだ。
   
加藤唐九郎や荒川豊蔵という戦後の陶芸界の巨人が、桃山陶芸の復興に取り掛かるのも昭和一桁という時期であった。そして、この時期は日本の陶磁史研究が本格化する時期とも重なる。


ここにきて、民藝の美よりも直接的に侘び茶の美が復興することになる。備前の金重陶陽もこの流れに乗る。そして、江戸期の小細工系の仕事から備前は様変わりするのだった。


しかし、世は日中戦争の開戦から満州国建国と流れる。満鉄調査部では中国の古窯の調査も行っている。しかし、陸軍の暴走は三国同盟締結に至り、そこから必然的にアメリカと戦うという結果の見えたルートに乗ってしまうのだった。
  
そして、戦後だ。もはや神風は吹くことがなくなり、天皇は人間宣言をした。この流れからすれば、この国はハワイ州のように日本州となることになる。しかし、そこまでアメリカが独り占めすることは、連合国内でのバランスを欠くことになるのであろう。


ひとつの国としてアイデンティティーを保つためには象徴天皇制も必要であったと結果論的には言いうる。伝統もまた然りだが、その伝統もナショナリズムに結びついてはいけない。となれば物作り大国に向けての伝統工芸はうってつけの素材である。


もう一つ、戦後に開花する抽象陶芸のさきがけとして抽象彫刻家となったイサム・ノグチが来日している。そして、魯山人の援助を受けて陶芸をも含む本格的な創作がなされるのが1950年代だ。


伝統工芸と前衛的な抽象陶芸が、実は同じような時期に芽吹き開花しているのだということを確認することは、案外大切な事かもしれない。
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