久しく常滑からの便りが途絶えてしまった。年齢からして、脳とか心臓とかの血管に欠陥でも現れたものかと東さんには、ご心配をおかけしてしまった。実際は、すこぶる健康で日々の雑事に追われていたに過ぎない。

また、本職の仕事でも、新たに中世の常滑焼の消費地情報をデータベース化する作業を始め、これが面白くなりだしてしまって、春からこっち、ずっとかかりっきりになっている。そして、あらためて鎌倉の凄さを実感したりしている。
常滑では招き猫を作家が与えられたテーマにしたがって制作し、それを切通しのコンクリート擁壁に取り付けた招き猫通りが話題になった。観光地としての体裁はいろいろと整ってくるのだが、本業の製陶業は瀕死の状態に近づいている。

もっとも常滑から生まれたINAXは失われた10年以来の長いトンネルをリストラや工場の海外移転などなどで潜り抜け、ここにきて好況期に入ったようだ。タイル博物館の一角を拡張してライブ・ミュージアムを増設。ここで開催されている帝国ホテルのレンガ・テラコッタ関係の企画展がなかなかいい。
ライブ・ミュージアムの建物も外壁に赤土の版築工法を取り入れ、内装には左官の高度なテクニックを採用。そして、体験できるのは光る泥団子作り。徹底的に土に拘るコンセプトで帝国ホテルのレンガ・テラコッタも大正期の常滑でフランク・ロイド・ライトの要求に応えた土の再現から取り組んでいる。

展示はシンプルすぎて歴史検証の過程をつぶさに展示する歴史民俗系の資料展示からすると物足らないという意見もあるだろうが、世間一般の要求はマニアックなパーツより、すきっとした全体像なのだろう。
それしても、細部に拘ってしまって一部のマニアにしか受けない展示を企画してしまう業界に対して、小泉改革の影響がじわじわと及んできた。自分の足元にも大きな変化が現れそうな雲行きだ。

たしかに、このままでは駄目だろう。だが、改革を進める側も業界を理解しているのだろうかと思われる節がある。経費削減だけで突っ走って本当に大丈夫なのだろうか。