ノリタケの森から丹波へ
名古屋の駅周辺の変り方は、近年著しいものがあって、JR高島屋のツインタワーから、トヨタのミッドランドタワー、そして、名鉄系のルーセントタワーなどが相次いでオープンしている。

そのルーセントタワーから少し西に進んだ所に「ノリタケの森」がある。ノリタケ・ミュージアム、ウェルカムホール、ギャラリー、そしてショップなどが建ち並ぶ場所は、かつての日本陶器の本社工場があった場所だ。
隣接するトヨタグループの「産業技術記念館」とともに東海地方の産業観光の目玉施設でもある。そのギャラリーで常滑の若手作家25人が作品を並べ、陶器市を開催しているというので早春の一日、冷たい北風の中を出かけていった。

若手作家は事務机二つ分くらいのスペースに、それぞれの作品を並べ、共通テーマでカップを1点づつ並べていた。

達者な仕事振りのものや、地味な作風を続ける者、そして、素人の趣味の陶芸と見まごうほどに稚拙なものなど様々であった。自分自身が若手で若手作家と付き合っていたころの作風は、どれもこんなに大人しくはなかった。

そのころの雰囲気をもった今の若手はわずかに2人のみであった。みんなこじんまりとまとまっていきそうだ。背伸びをして作品で自己主張することなんて陶芸の仕事じゃないと悟っているかのようだ。
たしかに、陶芸で声高に自己主張されてもなあ、とは思わないでもない。かつての若者達は、時代の雰囲気のなかで集団催眠にでも掛かったかのように自己主張ばかりをがなりたてていたのかもしれない。

そして、そのことに酔いしれていたみたいだ。成熟ということは無鉄砲な主張など、はなから行わないことに決まっている。そして、その先には個人の主張ではなく成熟した時代の表現が現れてくるはずである。
たしかに陶芸の世界では、いち早くジャパニーズ・クールを思わせる作品が量産されていたように思う。その作品はノリタケ・ミュージアムで展示されているヨーロピアン・クラシックな表現とはまったく異質でカッコイイのである。

そのカッコ良さは、今の若手作家の作品にもいくらか現れていた。時代の求めるものなのだろうか。そして、かつての若者たちも、かつてのような馬鹿をしなくなって久しい。
その後、かつての若者達が否応なく影響を受けた鯉江良二さんの作品展を丹波にできた陶芸美術館に見にでかけた。そこには良二スタイルが確立されてあった。アバンギャルドも伝統になりつつあるようだ。

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