(「侘びさび」について NO.3 補足)への返信 10/13    フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
中 野

漆芸の抽象表現は何を求めているの?っていう質問を後の方で用意していたのですが、先回りして回答が届いてしまったようで、おっと、ってところです。


(「侘びさび」についてNO.3 補足抜粋)

「決して人間様の考えを「自然」より次元の高いものと考えない、とでも言いましょうか。「詫び錆」の表現には、そういった自然観が貫徹している様に思います。
僕自身は、人間の表現の起源をアルタミラの壁画などにみるイリュージョンにあると考えているところがあります。そうすると、人間の持つそういった「観念」は、表現の根幹にあるもの・・・・といった考え方が重要になってきます。
一方、自然の持つ素材に着目した「観念」というのも人間にはあります。ここでいう「詫び錆」は、これに該当します。
実は、これも一つのイリュージョンでもありますから、これに依拠した表現も人間の表現の起源にあったと言えます。
例えばそれは、ストーンヘンジだったりします。

アルタミラやストーンヘンジは「わびさび」的美意識からは少しはずれて、自然と人間というくくりで議論したいところです。プリミティブアートの魅力とかも。さらに、民具(この言葉には抵抗があるので民芸の方がいいのですが)ともからめて。

          (松本民芸館より)

実は、先史美術も「わびさび」的美意識も、そして、民芸も全て追求していくと、人間と自然に行き着きます。これらは人間と自然の関係性が織り成す一表現様式に過ぎませんので。

僕の中では、これらはいつも地続きですし、また、地続きに見えていなければいけないように感じています。

この気構えは、恐らく僕が実際ものを作ることを繰り返しているからかもしれません。この辺は、逆にハカセの方から分析して欲しいところです。
そして、「わびさび」と自然では、やはり日本の自然が砂漠の自然と同じ美を醸すのか。たしかに「わびさび」的美は世界中の見出すことは可能ですが、それを美として設定することが行われていないのも現実なのではないかと考えるわけです。
前回、赤瀬川源平さんの「利休」のところでお話しましたが、「わびさび」的美を自覚的に「美」として打ち出し、そしてその美学を推進させたのは利休です。これは、僕も世界に例を見ないことだと思います。異論はありません。

欧米で自覚されたのは、恐らく赤瀬川さんが言うようにデュシャンのコンセプチュアル・アートまで待たなくてはならなかったのかも知れません。この辺は、もう少し欧米の資料が欲しいところです。

柳とリーチの民芸運動ではイギリスのスリップウェアに日本の民芸と同列の美があるとして取り上げられてきましたが、それがスタンダードな美として定着しているようにも思えないのです。

中国南部から日本列島に及ぶ照葉樹林文化のなかで、まるで南画的な風土の中でこそ発達し受容される美なのかもと。漆もこれに近い広がりでしたっけ。湿潤な風土。


民芸運動はたしかに大衆レベルで受容されていないのは、無名の作品より在銘の作品を珍重するところからもよく判ります。

ただ、民芸運動がめざした美の目標は桃山茶人のそれと同じですから、この美のあり方は、ひろく共有されているものかな。

また長くなりそうなので、少し暖めておきます。
(10/09)


それもそうですが、はたして民芸運動なるものが、日本において工芸関係者を除いてスタンダードになったのだろうか?という根本的な疑問も生じて来ます。

僕らは言わば関係者ですから、常識として民芸運動の何たるかくらいは知識として知っていますが、しかし、これがスタンダードなのかと問い直してみると意外に?です。

それから、僕ら日本人がヨーロッパにもつイメージは、石の文化であまりアジア的な香りを感じないのですが、以前仕事でドイツに行ったとき、かなり現地の博物館や資料館、そして美術館を数週間掛けて通いました。

そこで気付いたことは、主に中世や近世のインテリア(工芸品と言ってもいいかも知れません)ですが、僕らの持つイメージを超えて驚くほど木製品が多いのです。
そして、それらの多くは、日本の骨董屋が見たらよだれが出そうな所謂民芸調のものでした。

「あれっ」とショックに思ったのを今でも思い出します。そして、僕のお世話になったヴァインハイムのお宅では、お母さんが作ったという暖炉の縁の台には、民芸調の木彫が施されていて、それを家宝の様に愛でていました。

なので、民芸の精神性は、日本独自のあるいは、アジア独自のものではなく、恐らくどこの国にもある人間の作るものの普遍的な在り様だと思えてなりません。


民芸に関しては、何れじっくりと取り組むに値するテーマだと僕も考えております。是非その時は、熱い胸の内を聞かせてください。

(10/14)