返 信(「侘びさび」について NO.2)


by azuma
大分秋らしくなってきました。

今、歯医者にいます。予約をしても、いつも一時間は待たされるので仕事が詰まった今の僕には貴重な時間です。せっせと返事を書いています。

ところで、プリントアウトしたハカセからのご質問を繁々とながむれば......各行全てが一冊の書籍になるのでは・・・・と思わせる内容なので、相当乱暴に返答しなければならないようです。また、そもそも、このような質問に応えるだけの見識が今の僕にあるのか、はなはだ疑問ですが、その辺は差っ引いてお聞き下さるとありがたいです。流れですから;;;;



> なるほどなるほど。根来などは、輪島に比べれば、いっかにも手抜きの塗り
> といった感じですよね。それに彫りを加えていけば、未完の作品に彫りを加
> えた表現ということになりましょうか。


根来塗りですが、ハカセもご存知のように、洋の東西を越えて寺院では副業として様々な物をつくりその運営資金に当てていました。日本の寺院では、薬や味噌、そして酒の醸造技術はかなりのものだったようです。根来塗りもその中の一品でした。
(根来寺は、現在の和歌山県那賀郡岩出町根来にある真義真言宗の総本山である一乗山大伝法院根来寺を指します)。

その質は、相当レベルは高く堅牢に仕上げられたものだったようです。ですから、手抜きで粗悪品のため中塗りの黒が出た訳ではなく、そこまで使い込んだ証として「根来塗り」の黒中ということになるでしょうか。
後に茶人が、時間の経過を味(ここで言う「侘びさび」)として鑑賞珍重し今に至っていると思われます。
鎌倉彫に関しては、表面に彫刻が施されて凸凹のため中塗りの黒が出易いと言えそうです。表面的には根来と似ているものの、内容はちょっと違っていそうです。
 
 
> 「過ぎ行く、変遷して常に一箇所に留まらない時を感じることだと思うので
> す。」というのは、完璧な造形からは感じにくいものなのではないかしらと。

古典落語の名作に「火炎太鼓」という傑作がありますが、その中のくだりに、頼りない主人公の道具屋のしっかり者のかみさんが亭主に言います.......

「何だね、この汚い太鼓は!金蒔絵でもしているなら売れるけど、お前さん、こいつあ絶対売れないよ!」
「汚ねえんじゃねえよ、古いんだよ!おめえは、何にも分かっちゃいねえんだから。。。」
何をもって「完璧」とするかは難しいところですが、作り手のもつピュアーな観念を強く意識して、完成までもっていく事を指しているという意味でしょうか?
その意味では、完璧な造形も時の経過と共に次第に変化し、その表情として「時」を映すものへと姿を変えていきます。「侘びさび」の精神とは、そのことを事実として受け入れ味わうという姿勢を言うように思います。

これからが面白くなりそうですが、長くなりそうなので「つづく」とします。

10/06 東 日出夫