千葉県の陶芸家が元気です
今、ある雑誌の仕事で、千葉県に住んでいる陶芸家を訪ねて取材しています。千葉県にも陶芸家がいるんですか?とよく訊かれますが、プロとしてやってる人だけでも100人ぐらいはいるんじゃないでしょうか。アマチュアも入れると、数千人を数えると思います。

やきものと言えば「〇〇焼」といって、全国に産地があります。陶芸家はそういうところに住んでいて、千葉県には「〇〇焼」というのがないから、陶芸家もいないと思われている方が多いようです。同じことは東京でも神奈川でも言えますが、実際は東京にも神奈川にも陶芸家はそれぞれ数百人はいます。そして、そういう都会の周辺に住んでいる陶芸家たちの方が、地方の産地に住んでいる陶芸家たちよりも、どうやら元気がよさそうなのです。


(千葉勝浦の風景)

今、地方に行くと、昼間もシャッターが下りたままの商店が並ぶ商店街だの、すっかり活気が消え失せた町をたくさん見かけますが、同じようにやきものの産地も、窯元の倒産話に事欠かなくて、陶芸家の人たちの表情も今ひとつ冴えなかったりします。ところが、僕の知るかぎりでは、特に千葉県の陶芸家に限っては、なぜか元気、少なくとも、浮かない表情をしているということはありません。

それは何故かということを考えてみて、普通に思いつくことは、首都圏だからということではないでしょうか。つまり、東京という巨大マーケットをすぐ近くに控えているということですね。それも当ってなくはないのですが、ものが売れないということでは首都圏に工房を持っている陶芸家も同じです。マーケットはマーケットでも、それは物流のマーケットではありません。そうではなくて、陶芸教室という、手習いのマーケットですね。これが大きい。千葉県の陶芸家の多くが陶芸教室を営んでいます。そして、一軒につき20人から100人ぐらいまでの生徒さんを擁しているようです。この陶芸教室で経済的基盤を確立しているので、制作の方はさほどあくせくしなくてもすむようです。これが、千葉県の陶芸家が元気である理由のひとつなのです。


(千葉県在住 大河内泰弘作)
技術的な観点から言えば、千葉の陶芸家のレベルは決して高くありません。にもかかわらず、僕が思うには、今や千葉陶芸は日本陶芸の最先端を走っているのではないかということです。それはどういう意味かということを、これからぼつぼつと話していこうと思います。