ロリーの死   8月4日

 我が家で飼っていたロリー(この八月で10歳になるはずだった柴犬)が、急性毒物中毒で七月二十九日夕刻亡くなった。毒蛇に噛まれたか、あるいは猫イラズを散歩中に食べてしまったか(僕は、マムシにやられたと思っている)最後まで詳細は分からずに、5日間の看病の甲斐もなく逝ってしまった。長男が10歳の誕生日のプレゼントに犬を欲しがったので、市役所の掲示板でかみさんが見つけてきた。かなり成犬に近かったが、何となくおとなしく、かしこそうな雌犬を息子は選んだ。散歩も毎日欠かさずよく可愛がっていたので、看病疲れでウトウトしていた彼に、僕の方が先に見つけて「亡くなったぞ」と知らせると、「また吐いた?」と訳の分からない返答をしながら飛び起き、事態の念を押すと、ぼう然と突っ立った後涙を流しながら顔を洗いに行った。あとで聞いた話だが、この時息子は、その事態をどう納得していいか分からず「そうだロリーを食べよう」と思ったという。僕は、子供達がまだ小さい頃、よく「食べちゃうぞー」と言いながら追いかけ回したが、これは半分本気だった。それから、よく冗談でかみさんが「私が死んだら、海に流すか、鳥葬にして欲しい」と言うので「魚も鳥も皆避けていくだろうから、俺が食ってやるよ」と返していたが、これも半分本当の気分だ。

 愛する者の死を、人は生涯認識する事は出来ない。今まで居た者が、目の前から居なくなるという事態は理解を超えているからだ。愛するものを食べてしまうという認識の仕方は一番直裁で納得のいく死の受け入れ方かも知れない。ドナーカードに脳死の際、移植を希望する旨を記入する人も、同じような根拠がその背景があるのかも知れない。何れにしても息子もロリーとの10年のつき合いの中で、とても良く育っているようでロリーに感謝したい.
合掌.

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